「旦那様について知りたいからです」
その言葉を口にしたとき、自分の気持ちが腑に落ちた。
(そっか。アイリスの言うとおりね。わたくし、旦那様のことをもっと知りたいのだわ)
どうせ追い出される身ならば、彼のことを知る必要などない。それなのに知りたくなるのは、心の奥底ではここにいたいと思っているいるからだ。
「その……、旦那様の側にいたいから知っておきたくて」
正面に座るテオドールの目が大きく見開かれる。テオドールは片手で自分の顔を覆うと、「参ったな」と呟いた。
(もしかして、ずうずうしい女だと呆れられた?)
リーゼロッテはサーッと顔を青くする。
「申し訳ありません。今の言葉は忘れて──」
「だめだ」
テオドールがリーゼロッテの言葉を遮るように言う。
「旦那様?」
「忘れるものか。ただ、俺が先に口説こうと思っていたのに……先に言われてしまうとは不甲斐ない」
本当に困り果てたようなテオドールの顔を見て、カーッと頬が熱くなる。
(口説こうと思っていた? わたくしを?)



