「おかしいわね」

 イラリアはほうっと息を吐く。

「わたくしの侍女達は現に、あなたに嫌がらせをされたと証言しているの」
「なんですって?」

 リーゼロッテは眉根を寄せる。

 証言などあるはずがない。だって、会ったことすらない人達なのだから。今ここにいるふたりの侍女も、もちろん今日が初対面だ。

「ええ、そうよ。ねえ、マリア、リリアン」

 マリアとリリアンというのは、イラリアの侍女の名前のようだ。彼女の問いかけに、部屋にいる侍女ふたりがこくこくと頷く。

「でたらめを言うのは止めて。わたくしとあなた達は、会ったことすらないわ」
「リーゼロッテ様。今はわたくしが聞いているのよ」

 イラリアの咎める声に、リーゼロッテはハッとする。唇を引き結ぶと「申し訳ございません」と謝罪した。

(どういうことなの?)

 ふたりの侍女は俯いてリーゼロッテのほうを見ようともしない。顔色が悪く、何かに怯えているようにも見えた。

「かわいそうに。こんなに怖がってしまって。でも、わたくしがいるからもう大丈夫」

 イラリアは妖艶に微笑むと、リーゼロッテを真っすぐに見据える。