(どうしましょう)

 どうすればいいのか困惑していると、アイリスからツンツンとわき腹を小突かれた。目が合うとウインクされたので、どうやら行けと言っているようだ。
 リーゼロッテは恐る恐る、テオドールの差し出す手に自分の手を重ねる。その瞬間、力強く手を引かれて体が宙に浮いた。

「きゃっ!」

 悲鳴を上げたのも束の間。テオドールはまるで人形でも扱うかのように軽々とリーゼロッテの体を引き上げると、自分の前に横座りに座らせる。グリフォンはそのタイミングを見計らったかのように、闘技場の上空をぐわんと飛んだ。

(な、何⁉)

 混乱しているリーゼロッテに、テオドールが耳打ちする。

「手を振ってやれ」
「え?」
「観衆がこちらを見ている。手を振ってやれ」
「あ、はい」

 テオドールの言う通り、観戦していた観衆がこちらを見上げて大きく手を振っていた。リーゼロッテは恐る恐る片手を上げようとする。
 しかし、グリフォンの背中は不安定だ。グリフォンが向きを変えるたびに大きく揺れた。

(落ちる!)

 恐怖を感じたリーゼロッテは思わず両手でテオドールにしがみつく。すると、テオドールはリーゼロッテの腰に、自分の腕を回した。