アイリスは半ば強引に、リーゼロッテの腕を引く。
 剣技大会の会場は彼女の言う通り、すごい熱気だった。中央の広いスペースをぐるりと囲むように設けられた階段状の観覧席は満席だ。

「リーゼロッテ様、こちらです。参加者の家族用の席がありますので」

 戸惑うリーゼロッテの手をアイリスはぐいぐい引く。
 リーゼロッテはアイリスが案内してくれた席に座ると、前を向く。最前列に用意されたその席は闘技場の全体がよく見渡せた。

「わあっ!」

 周囲から大きな歓声が沸き起こる。今行っていた試合の決着が付いたのだ。中央にいる騎士ふたりは自身のヒッポグリフに跨ったまま片手を伸ばし合い、握手して健闘を讃え合っていた。