隣にいるアイリスに話しかけようとしたそのとき、ふいにテオドールの視線がこちらを向いた。
「リーゼロッテ?」
声は聞こえないが、唇の形から自分の名を呼んだような気がした。
まさかリーゼロッテがここにいるとは思っていなかったのだろう。テオドールは明らかに驚いた様子で、大きく目を見開く。
(やっぱり見学しないほうがよかったかしら?)
呼んでもいないのにいることを不快に思われたかもしれない。リーゼロッテがそう思って俯きかけたとき、至近距離で鳥の羽ばたきのような風を切る音が聞こえる。
「リーゼロッテ。手を」
低い声が頭上から聞こえた。リーゼロッテはハッとして顔を上げる。グリフォンに乗ったテオドールがこちらに片手を差し出していた。
「え?」
「こちらへ」
テオドールは戸惑うリーゼロッテに手を差し出しだしたまま、じっと彼女の反応を待っていた。
(まだまだ勉強不足ね)
あとでチェックしておこうと、心に決める。
「では、今回は二年ぶりの開催なのね?」
「はい、その通りです。ラフォン幻獣騎士団はイスタールでも指折りの精鋭部隊で、その中でも最強だと実質的に世界最強の幻獣騎士ということになります。だから、参加者はとても気合を入れるんですよ。家族や友人、恋人も応援に駆けつけて、とっても盛り上がるんです」



