ある日、イラリアに言われた一言で確信した。犯人はイラリア自身だと。

 リーゼロッテとは五年間にわたり婚約者として過ごした。彼女はアドルフが他の女性と親しくしようと嫉妬などしないし、他の男と遊んだりも絶対にしない。

「ああ、アドルフ。かわいそうに。わたくしが何とかしてあげる」

 イラリアはそう言うと、アドルフの頬に手を添える。

「ありがたき幸せです」

 アドルフはイラリアの手を取るとそこに口づけた。
 公爵令嬢と王女殿下。どちらを取るかなんて、聞かれるまでもない。

 少し逡巡してから彼女との距離を近づけ、今度は唇に口づける。すると、それはなんなく受け入れられた。

 後日召喚されたリーゼロッテはアドルフに助けを求めるような視線を送った。
 その視線から目を逸らすのに、ためらいはなかった。