バレンタインと恋の魔法

川田さんは黙ったまま目の前にカフェラテの入ったピンク色のカップを置いてくれた。


私があまりにも頻繁にお店に行くから、わざわざ私専用のカップを買ってくれたのだ。



…私も先輩の居場所に入れた気がして、嬉しかったのに。このカップを使えることも、もうないのかな…。



せっかく川田さんが入れてくれたカフェラテに、私の涙がどんどん吸い込まれていく。



「どうして琥太郎がそんなことを言ったのかわからないけど、杏ちゃんのことが嫌いになったわけではないと思うよ」


「…え?」


「二人でスイーツバイキング行った日あるでしょ?あれ、琥太郎になんて言って誘われたの?」


「えっと…敵情視察だって。川田さん達に他のお店のスイーツを参考に、新しいメニューを考えろって言われたからって…」


「あはは、琥太郎そんなこと言ったんだ。本当は口止めされてたんだけどね、あれ本当は杏ちゃんを喜ばせたかったからなんだよ」


「…え?」



川田さんは洗い終わったコーヒーカップを布巾で拭きながら、ふっと優しく笑った。



「琥太郎って、あの顔だし感情を出すのも苦手で、昔から一匹狼って感じだったらしいんだ。俺たちも似たような感じで、それで意気投合したんだけどさ。だから杏ちゃんが琥太郎から離れないで普通に笑いかけてくれて、話してくれることがすごく嬉しかったんだって。もらってばっかで申し訳ない、何か返したいって相談してきたから、杏ちゃんが喜ぶことしてあげれば?って俺ら三人で提案したんだ。杏ちゃんがスイーツ好きだって聞いてたから、スイーツバイキングにでも連れて行ってあげたら?ってね」


「そう、だったんだ…」



あの日、先輩は私のために連れて行ってくれたんだ…。


驚きすぎて涙なんて止まってしまっていた。