バレンタインと恋の魔法

「…なんだよ?」


「え!?あ、いや、なんでもな、いです…」



こんなに誰かの笑顔だけでときめいたのなんて初めてだった。


このまま帰るのかと思いきや、先輩はお店の近くの公園に行きたいと言った。



「公園なんか行ってなにするんですか?あ、わかった。ブランコ乗りたいんですか?ありますよね、たまに初心というか、子どもの気持ちに戻りたいって思うこと」


「違う」



先輩はブランコも滑り台も無視して進んでいき、大きな木の後ろに回った。


そして隠されるように置いてあった段ボール箱を取り出した。



「え、猫?あ、子猫もいる!」



毛布が敷き詰められている箱の中を覗き込むと、まだら模様の茶色の猫と、その傍らに子猫が一匹ちょこんと座っていた。



「捨ててあった段ボールの中にこいつらが棲みついてるのを葉山さんが見つけたんだ。飼うことはできないから、毛布とか食べ物は交代制で与えてやってんだ。でも俺が一番嫌われてて、よく母猫に引っかかれるんだけど」



そう言って先輩がおでこに貼ってある絆創膏を指差した。



「ええ、可愛い…。名前とかないんですか?」


「んーないな。母猫の方は茶色だからブラウンって呼んでるんだけど、子猫の方がまだ決まってない。だから今は適当にチビとか呼んでる」



子猫が少し首を傾げながらつぶらな瞳で私を見つめてきて、その可愛さにきゅーんとハートを鷲掴みにされる。