バレンタインと恋の魔法

わけがわからないまま、先輩と連絡先を交換する。



「…明日、駅に八時。以上。もう店開く時間だから帰れ」


「え」



先輩に押し出されるようにしてお店を出る。


後ろでは川田さん達三人が「また来てねー」と優しく手を振ってくれていた。





翌日。駅に八時になる二分前に着くと、もうすでに天馬先輩は電柱にもたれかかるようにしていつも通りの気だるげな目をして立っていた。



「あの、おはようございます。遅れてすみません」


「…別に。まだ時間前じゃん。行くぞ」



両手をポケットに突っ込み、ずんずん歩き出してしまった先輩に慌ててついていく。



「えっと…あの、先輩はいつからあのお店で働いてるんですか?」



無言に耐えられなくなり、歩くのが速い先輩にへらっと笑顔を貼り付けて質問をする。



「…半年くらい前から」


「へぇ。川田さん達、みんないい人ですね」



それまで足早に歩いていた先輩が急に立ち止まり、思わずその背中に鼻をぶつける。



何かまずいことを言ってしまっただろうかと不安に思って顔を上げると、先輩は前を向いたまま「ああ…」と呟いた。


だけどその瞳は、少年のように少しだけ輝いている。