「決まりました。オムそばとタコ焼きとポテト。それから、手羽先にします。樹里さんは?」
「そうねぇ。しめさば、ホッケ、イカ刺し」
「しめさば?」
「え? ダメなの?」
「いや、何かこうガツンとする物の方が……いいんじゃないかなって」
「そう、か。そうよね。じゃあ……もつ煮、玉子焼き。それから、唐揚げ。これでどう」
「いいと思います」


 納得したように大樹は大きく頷き、タブレット端末でサッサと注文をし始める。その手元は軽やかで、彼はどこか楽しそうにも見えた。今日は、自棄食いしたっていい。樹里は自分にそう言い聞かせた。


「樹里さん、何飲みますか。ビール?」
「あ、いや。今日はハイボールが良いな」
「了解です。じゃあ僕も」


 そう応じた大樹に、樹里は驚いた。彼はあまり酒を飲まない。会社の飲み会だって、ウーロン茶やジュースを飲んでいるような子だ。あぁ慰められるのか。そう気付くと、つい力なく笑った。気を遣われるのは好きじゃない。元カレだった、と正直に言ってしまおう。それくらいのことを彼には見られている。

 仕事の話をしているうちに、ハイボールが届く。すぐに乾杯をして、一息。ゆっくりと一口目を飲み込んだ。聞かれる前に、自分から話してしまおう。そう心を決める。