「春か。予定日とか聞いたんですか」
「四月の十六とか言ってたな」
「四月十六日……」


 復唱した朱莉は、何か検索し始める。その細い指先をぼんやりと見つめた。このままじゃいられない。事実なのかは、確認しなければいけない。このまま、二人の未来を描けるはずがない。ニコニコと笑顔で指輪を見られる? 幸せだなって、思える? 樹里は何度も自分に問うた。

 けれど全て、答えはノーだった。


「えぇと。今、五週くらいみたいですね。まだ外からじゃ分からないかぁ」
「そうだね。いつもと同じだったと思う」
「それから……疑惑の日は、先月の二十四日あたり。彼氏さんどうでした?」
「二十四日? え」


 樹里は言葉を失くした。またネックレスに触れる。心臓がドクンと跳ねて、一気に煩くなった。頭がクラクラする。朱莉は、ほらここ、と樹里に画面を突き出した。その先に書かれた七月二十四日。


「それ、私の誕生日、だ」


 樹里はそう言って、朱莉を見つめ返した。