「だとしたらね。もう壊れたんだからいいじゃない。お礼を言うのも変だけど、私も彼の本性を知れた。結婚に失敗しなくて済んだ。ありがとう」
樹里が穏やかに言えば、香澄は悔しそうに唇を噛んだ。そして、できるだけ穏やかな声で繰り返す。もういいんじゃないかな、と。
「私たち、もう三十七よ? こんな子供染みたことで時間を使うなんて、勿体ないと思わない?」
香澄は目を背け、頻りに口元を動かし、ゴクリと唾を飲み込む。それから、大きく長い息を吐いた。そして、クルンとした睫毛がゆっくりと持ち上がる。
「あぁあ……上手くいってたのに」
「どういうことだよ、おい。小笠原」
「煩いなぁ。そういうことだよ、千裕。私は、樹里が不幸になれば何でも良かったの。完全に壊しきれば、私の勝ちだと思ったのに」
「どういうことなんだよ……」
「千裕だって、樹里と別れようかなって確かに言ったじゃない。だからね、思い付いたのよ」
渦中の千裕は、パニックだった。意味分かんねぇよ、と何度も頭を抱える。憐れだはと思ったが、優しい手を差し伸べる気にはならない。そして全てがバレた香澄は、まったく動じなかった。あぁあ、と言いながら、首をグルグル回している。
樹里はさっき、香澄の言葉に彼女の本心を見つけてしまった。どうしで私じゃなくて樹里なのか。そう漏らした言葉が、本心なのだろう。恐らく香澄は、ただ樹里を陥れたいだけなのだ。
樹里が穏やかに言えば、香澄は悔しそうに唇を噛んだ。そして、できるだけ穏やかな声で繰り返す。もういいんじゃないかな、と。
「私たち、もう三十七よ? こんな子供染みたことで時間を使うなんて、勿体ないと思わない?」
香澄は目を背け、頻りに口元を動かし、ゴクリと唾を飲み込む。それから、大きく長い息を吐いた。そして、クルンとした睫毛がゆっくりと持ち上がる。
「あぁあ……上手くいってたのに」
「どういうことだよ、おい。小笠原」
「煩いなぁ。そういうことだよ、千裕。私は、樹里が不幸になれば何でも良かったの。完全に壊しきれば、私の勝ちだと思ったのに」
「どういうことなんだよ……」
「千裕だって、樹里と別れようかなって確かに言ったじゃない。だからね、思い付いたのよ」
渦中の千裕は、パニックだった。意味分かんねぇよ、と何度も頭を抱える。憐れだはと思ったが、優しい手を差し伸べる気にはならない。そして全てがバレた香澄は、まったく動じなかった。あぁあ、と言いながら、首をグルグル回している。
樹里はさっき、香澄の言葉に彼女の本心を見つけてしまった。どうしで私じゃなくて樹里なのか。そう漏らした言葉が、本心なのだろう。恐らく香澄は、ただ樹里を陥れたいだけなのだ。

