「朱莉と別れて、家に帰って。クリスマスだなって、ちょっと落ち込んでた時にね。彼が訪ねて来たの。お母さんが倒れてしまって、ブンタを預ける場所が急だから見つからない。申し訳ないけど、餌だけでも頼めないかって」
「ほぉ。凄い急展開。それで、引き受けたんだね」
「そう。で、ブンタが不安そうだったから、そのまま彼の部屋で様子見てたの。朝ごはんもあまり食べなくてね。大丈夫だよってしてる間に、寝ちゃったのよ。そうしたら彼が帰って来て。お礼にご飯作るから食べてって」


 事実を時系列に沿って説明する。そこに至る自分の感情は、今は置いておきたい。うわっ、とか、うんうん、だとか言いながら、樹里の話を聞いていた朱莉。そして、パーツが出揃ったのだろう。出て来たのがあのカレーだったってわけか、と先回りして言った。なるほどねぇ、とか付け加えながら。


「見た目が似てるカレーが出て来て。横にプリンも並んだ。否が応でも思い出してはいたんだけどさ。普通は、食べたことのある味だなんて思わないじゃない」
「そうだね」
「そうしたら、彼が言ったの。朱莉と行ったあの日に、私だって気付いてたんだって。泣いてたから声を掛けられなかったって」
「そっか。なるほどね。うんうん。それで、樹里ちゃんのその落ち込んでる感じは、好きだったってことでいい?」


 ストレートにぶつけて来るのが朱莉だ。一瞬たじろいだが、そうだったみたい、と素直に認めた。彼を知りたいと思ったことも、正直に話す。朱莉はもちろん、それを茶化すことはなかった。