〇病院・病室
  ベッドにシャルル・サガン、上半身起こしている。原宿みな、立っている。吉田まき、立っている。梅村晴子、立っている。近藤勇、立っている。
みな「ねえ、漫画ってどんなだった?」
  サガン、笑顔になる。
サガン「聞きたい?」
みな「う、うん」
サガン「一休さんの話なんだ」
みな、モノローグ「い、いっきゅうさあああああああん」
サガン「そうなんだ」
サガン「ある日一休さんは、和尚さんに、メイド喫茶に届け物を頼まれるんだ」
みな、モノローグ「め、メイド喫茶あああああああ」
サガン「ところが、メイド喫茶に行くには橋を渡らないといけないんだけど、橋の前には立て札があった。「この橋渡るべからず」って」
みな、モノローグ「有名な話だあ」
サガン「一休さんは悩む。届け物を渡したいけど、「この橋渡るべからず」って書いてある」
みな、モノローグ「うん、ここで一休さんの頓智(とんち)がでるんだ」
サガン「ところが、橋の向こうでメイドさんが出てくるんだ」
みな「え?」
サガン「メイドさんがあまりにかわいいものだから、一休さんはつい橋を渡ってします」
みな、モノローグ「頓智はどうしたあ」
サガン「ところがメイド喫茶のオーナーが現れ、「おいおい一休さん、立て札見なかったんですか。「この橋渡るべからず」って書いてあるでしょう」というんだ」
みな、モノローグ「ええええええええええ。全然違う話になってるよお」
サガン「あわてた一休さんはいいわけを考えるんだ」
みな、モノローグ「い、いいわけえ。頓智じゃなくて」
サガン「一休さんは考えた。そうしてひらめいたんだ。「私は橋の端っこを渡ったんじゃなくて、真ん中を渡ったって」」
  サガン、笑顔。みな、唖然としいる。まき、苦笑い。近藤、苦笑。晴子、苦笑い。
みな「は、ははあ」
サガン「おかしいだろう」
みな「う、うん」
みな「読んでみたいなあ」
サガン「ほんと」
みな「うん」
サガン「じゃあ、僕、また描くよ」
みな「シャルル君は夢があるんだ」
みな、モノローグ「女の子は妄想する。恋のドラマチックな展開を」
みな、モノローグ「例えばベッドで傷ついた男子が夢を語るとか」
サガン「(元気よく)うん」
  みな、微笑む。
サガン「僕は日本で有名な漫画家になるんだ」
みな「へえ」
サガン「で、ハロウインでファイナルファンタジーに出てくるチョコボの仮装をするんだ」(注:チョコボとは株式会社スクエア・エニックスのゲームファイナルファンタジーシリーズに登場する架空の鳥である)
みな、モノローグ「ええええええええええええ」
みな、モノローグ「あ、いや、おい、漫画家になるのが夢じゃないんかい」
  まき、苦笑する。近藤、苦笑い。晴子、笑っている。
みな「あ、そうなんだ。へえ、かなうといいね」
サガン「(元気よく)うん」
みな「ははは」
みな「見てみたいなあ。シャルル君のチョコボ姿」
みな(心にもないこと言っちゃった)
一同「はははは」
サガン「僕もチョコボ姿ブラザーに見せたい」
みな、モノローグ「あ、いやブラザーっていうなよ」
みな「う、うん」
まき「シャルル君、養生したまえ」
サガン「うん」
みな、モノローグ「私は吉田先生にこのことはプライバシーがあるから、内緒にしろ、と言われた。人に何か聞かれても、プライバシーがあるから、答えるな、と言われた」
みな、モノローグ「私は迎えに来ていたお母さんと帰った」
みな、モノローグ「シャルル君は数日安静が必要らしい」
みな、モノローグ「女の子はドラマチックな恋の展開を期待する」
みな、モノローグ「例えば、退院した男子と再会。そこから・・・・・・・」