「遅れてすみません!」
 文化ホール2階、『3Trees&MORE 様』と書かれた控室のドアを開けて、小学六年生の相馬樹(そうまいつき)は勢いよく頭を下げた。

「おう、樹、来たか。間に合って良かったよ」

 クラブ顧問の高桑先生がホッと息をつく。
 樹の家の事情を唯一知っている先生は「大丈夫か?」と小さく尋ね、樹はこくんと頷いた。

「あの、場当たりは?」
「もうとっくに終わったっつーの。なあ」
 奥にいた和樹が、怒りと蔑みが混ざった声であざ笑いながら、幸樹たちに同意を求める。

「まあまあ」と、高桑先生は和樹をたしなめ「そういうわけだから樹、場当たりやってみて気が付いた舞台上の注意点、話しとくぞ」と樹に向き直った。

「……はい。すみません」