「焼き鳥って何で美味しいんだろうねぇ」
あぁ、意味のないことを言ったな。分かっていたのに、間を埋めようとしてしまった。
今晩は、五十嵐くんとの約束の日だ。自然に誘って、いつも通りに。そう何度も言い聞かせてきたし、こうして連れてこられたのだから、まずは第一段階突破だろう。だが、五十嵐くんが来た時の『自然さ』を演出するために、緊張はまだ続いている。
「何言ってんの、カナコ。物思いにふけて。あ、ついにあれか。恋が芽生えたのか」
はぁ? と睨みつければ、暁子はキャッキャと楽しそうに腹を抱えた。今は、私の話を掘り下げられたくない。それに、簡単に触れて欲しくもなかった。
「で?」
「ん?」
「今日、本当は何を狙ってるの」
「え……何の話」
「あのねぇ。何年一緒にいると思ってんのよ。そんなガチガチ固まった顔で焼き鳥誘ってさ。何も怪しまれないとでも思ったわけ?」
眼前の景色が、ピシリ、と音を立てた。完璧だと思ったのに。恐る恐る暁子を見れば、あぁ全てお見通しなんだと悟る。もう、上手くいったと思ったのに。そう言いながらテーブルに突っ伏した私に、暁子はケラケラとまた嬉しそうに笑った。やっぱりこういうことは、性に合わないのだ。ムスッとした顔を上げた時、ちょうど五十嵐くんが視界に入った。タイミングが良いのか、悪いのか。申し訳ない気持ちで、真っ直ぐに彼を見られない。
あぁ、意味のないことを言ったな。分かっていたのに、間を埋めようとしてしまった。
今晩は、五十嵐くんとの約束の日だ。自然に誘って、いつも通りに。そう何度も言い聞かせてきたし、こうして連れてこられたのだから、まずは第一段階突破だろう。だが、五十嵐くんが来た時の『自然さ』を演出するために、緊張はまだ続いている。
「何言ってんの、カナコ。物思いにふけて。あ、ついにあれか。恋が芽生えたのか」
はぁ? と睨みつければ、暁子はキャッキャと楽しそうに腹を抱えた。今は、私の話を掘り下げられたくない。それに、簡単に触れて欲しくもなかった。
「で?」
「ん?」
「今日、本当は何を狙ってるの」
「え……何の話」
「あのねぇ。何年一緒にいると思ってんのよ。そんなガチガチ固まった顔で焼き鳥誘ってさ。何も怪しまれないとでも思ったわけ?」
眼前の景色が、ピシリ、と音を立てた。完璧だと思ったのに。恐る恐る暁子を見れば、あぁ全てお見通しなんだと悟る。もう、上手くいったと思ったのに。そう言いながらテーブルに突っ伏した私に、暁子はケラケラとまた嬉しそうに笑った。やっぱりこういうことは、性に合わないのだ。ムスッとした顔を上げた時、ちょうど五十嵐くんが視界に入った。タイミングが良いのか、悪いのか。申し訳ない気持ちで、真っ直ぐに彼を見られない。

