「いらっしゃいませ。二名様ですか」
「はい」
「こちらへどうぞ」

 カラン、と音を鳴らしたドアから、女の子が二人入ってきた。暑苦しい外気がモワンと店内に流れ込む。まぁくんもそちらへ視線を向けたが、僕のカレーが仕上がるところなのだろう。直ぐに目線は戻された。はニコっと笑顔を作って、彼女たちを案内している。大きくなったなぁ、なんて思うのは、おじさんの証拠。誰にもバレないように、彼女の成長に少し口元を緩めた。

「ほら、キーマ。サラダも食えよ。どうせカナコには綺麗に作って、自分は残り物ばっか適当に食ってるんだろ」
「あぁ……ははは。バレてる?」
「バレるさ。カナコは気付いてるか知らねぇけど……って、何描いてんだよ」
「え? 頑張ってるまぁくん」

 宏海、と穏やかに言うくせに、ちっとも笑ってない目をする幼馴染。「怖い、怖い」と身震いして見せて、僕はすぐカレーに手を伸ばした。まぁくんの料理は美味しくて、いつだって僕は笑顔になってしまう。初めて彼の作ったものを食べたのは、いつだったっけ。あの時も、カレーだったことだけは覚えている。

 まぁくんは、休むことなく次のカレーを作り始めた。あ、あのお客さんはチキンカレーかぁ。あれも美味しいんだよな。それをボォっと眺めつつ、ゆっくりと咀嚼を繰り返した。千夏が洗い物をする音がする。本当に大人になったなぁ。その視線に気付いたのだろう。千夏が、こちらに身を乗出して来た。