「ねぇカナコ。じゃあ、聞いても良い?」
「何なりと。お答えできる範囲ならば」
「あのさ、そもそもなんだけれど。恋って、今更どうやってするの。というか、どう出会うの」
「え……それを私に聞く」
「しかないじゃない。アプリとか使うの? それももう、おばさんだから駄目なんじゃない?」

 二人共黙り込んだ。私だって、そんなの分からない。

「カナコは本当に良かったわよねぇ。宏海くんと再会して」
「いや、でも事実婚って形はしてたって、そういう関係じゃないし」
「でも、好きでしょう」
「いや……そういう、わけではないんじゃないかな」
「あ、変な間を空けたわね」

 一気に気まずくなった。茉莉花が心配するから、暁子の今後の話をしようと思ったのに。結局、ブーメラン。触れられたくないような、笑い飛ばしたいような、微妙な感情が踊っている。

「好き、とまではいってなくたってさ。幸せだなぁとは思うわけでしょ」
「あぁ……まぁね。仕事から帰ったら、温かいご飯がすぐに出てくるんだよ? 幸せでしょうよ。お弁当だって作ってくれるし」
「うん、そうよね。セックス出来るかってのは、もうどうだっていいけど。今の生活は宏海くんじゃないと、他の人じゃ駄目なんじゃない?」

 核心を突かれた気がした。そうなのだ。彼女の言う通り、この幸せは宏海だから成り立っている。彼の優しさと穏やかさ。それが疲れた心を癒やしてくれている。例えば、匡では駄目だっただろう。絶対に毎日喧嘩する。どうして片付けないんだ。弁当箱出せ。そう怒り狂う匡が思い浮かぶのだ。

「カナコ。そういう好きも、あっていいと思うよ」

分からず屋を諭すかような顔をして、暁子が笑った。