「夕べのカナちゃん、おかしかったなぁ……どうしたんだろ」
アトリエの作業机に座った僕――中川宏海は、昨夜を思い出しながら、ゆっくりと首を傾げた。いつものように進んでいた食事。彼女の様子が変わったのは、玉子焼きの話題になった後だ。カナちゃんが顔を顰めた。声を掛けたけれど、何も返って来ない。僕はただ、黙り込んだ彼女を見守ることしか出来なかった。理由が何も分からない。でも、あんな顔をされたら、理由はどうであれ全てに不安になってしまうのだ。もしかして、この生活を後悔しているのではないか――
「中川さん、こんちはぁ」
古ぼけたインターホンの音が鳴り、聞こえてくる声にハッとする。慌てて玄関の扉を開ければ、ムキムキの池内くんが今日も満面な笑みを浮かべて立っていた。
「いらっしゃい。暑かったでしょう。入って」
そう誘えば、彼の後ろから、ひょこっと線の細い佐々木くんも顔を出した。彼はまだ二十代半ばくらいの、若い男の子。雑な池内くんをさり気なくフォローするような、冷静で気配りが出来る子だと僕は思っている。
アトリエの作業机に座った僕――中川宏海は、昨夜を思い出しながら、ゆっくりと首を傾げた。いつものように進んでいた食事。彼女の様子が変わったのは、玉子焼きの話題になった後だ。カナちゃんが顔を顰めた。声を掛けたけれど、何も返って来ない。僕はただ、黙り込んだ彼女を見守ることしか出来なかった。理由が何も分からない。でも、あんな顔をされたら、理由はどうであれ全てに不安になってしまうのだ。もしかして、この生活を後悔しているのではないか――
「中川さん、こんちはぁ」
古ぼけたインターホンの音が鳴り、聞こえてくる声にハッとする。慌てて玄関の扉を開ければ、ムキムキの池内くんが今日も満面な笑みを浮かべて立っていた。
「いらっしゃい。暑かったでしょう。入って」
そう誘えば、彼の後ろから、ひょこっと線の細い佐々木くんも顔を出した。彼はまだ二十代半ばくらいの、若い男の子。雑な池内くんをさり気なくフォローするような、冷静で気配りが出来る子だと僕は思っている。

