「母さん。あのね」
「うん」
「おじいちゃんがね。中川さんといるようになって、母さんがよく笑ってるって言ってた。おばあちゃんは、娘には幸せでいて欲しいって。でも、中川さんの気持ちも考えなくちゃいけないって。でも二人共、母さんの幸せを願ってたよ」
カナタから紡がれたのは、初めて聞く話だった。きっと、私が台所にいた時に話したのだろう。母は宏海の心配もしているのか。まぁ、あれだけ世話になっているのだ。そう考えるのも自然だ。出来れば、今のように中途半端な関係ではなく彼にも幸せに、と。それが、娘の人生と共になくても。
今、私はどうするべきか。いや、どうしたいのか。これから先、私は宏海と共にあれば、と思っているけれど。まずは何より、カナタの本心。それから、宏海の拒絶と本音。大切なのはそっちで、私の気持ちなど一番最後でいい。
「母さん。俺ね、今度こそ幸せになって欲しいと思ってるよ」
「……え」
「正直に言えば、恨みがないわけじゃない。でも、憎しみだけでもないんだ。再会して、たくさん話して。母さんは、今もちゃんと俺の母さんだった。だから、幸せになって欲しいと思ってるよ。心の底から」
そう言った息子が、大人びた顔をして笑った。我慢できなかった涙で、歪んでいくその顔。私は、幸せになってもいいのだろうか。
「うん」
「おじいちゃんがね。中川さんといるようになって、母さんがよく笑ってるって言ってた。おばあちゃんは、娘には幸せでいて欲しいって。でも、中川さんの気持ちも考えなくちゃいけないって。でも二人共、母さんの幸せを願ってたよ」
カナタから紡がれたのは、初めて聞く話だった。きっと、私が台所にいた時に話したのだろう。母は宏海の心配もしているのか。まぁ、あれだけ世話になっているのだ。そう考えるのも自然だ。出来れば、今のように中途半端な関係ではなく彼にも幸せに、と。それが、娘の人生と共になくても。
今、私はどうするべきか。いや、どうしたいのか。これから先、私は宏海と共にあれば、と思っているけれど。まずは何より、カナタの本心。それから、宏海の拒絶と本音。大切なのはそっちで、私の気持ちなど一番最後でいい。
「母さん。俺ね、今度こそ幸せになって欲しいと思ってるよ」
「……え」
「正直に言えば、恨みがないわけじゃない。でも、憎しみだけでもないんだ。再会して、たくさん話して。母さんは、今もちゃんと俺の母さんだった。だから、幸せになって欲しいと思ってるよ。心の底から」
そう言った息子が、大人びた顔をして笑った。我慢できなかった涙で、歪んでいくその顔。私は、幸せになってもいいのだろうか。

