「おじいちゃんはさ。正直、どう思ってる?」
「そうだな……お前の父さんを悪く言うのはいけないだろうが、アイツよりもずっといい奴だと思ってるよ。カナコもよく笑ってるからな」
「そっか……うん、そうだよね」
二人の内緒話はそれだけ。母さんが、台所から大事そうに皿を運んできたから。何の話してたの、と聞かれたけれど、おじいちゃんが「男同士の内緒話だ」って。きっと二人共、母さんの幸せを願ってる。出来ることなら、中川さんと一緒に、と。内緒だよね、なんて同調してから、箸を取る。その瞬間、笑顔でいた母さんが、一気に緊張したのが分かった。
「では、いただきます」
見た目は、昔よりもずっと綺麗。チラッと目をやったシンクからは、フライパンの柄が見えたりしていない。きっと、たくさん練習したんだろうな。それも、中川さんに教わって。恐る恐る、手を伸ばす。絶対に昔の味ではないけれど、母が作ってくれたんだ。ずっと食べたかった玉子焼き。やたら甘い、あんなのじゃなくって。やっぱり少し不格好なこれを。

