「ごめんなさい?」
「うん」
「母さんだって、中川さんのこと好きじゃない。どうして」
「あ、いや。その後に言葉を続けるつもりだったの。ごめんなさい。少しだけ時間を貰えませんかって。そもそもね、私は今日のことで頭がいっぱいだったから。ごめんなさいって言った後、宏海は私に何も言わせてくれなかった。続きを言わないように、彼はずっと喋り続けた。私を家に送り届けるまで」
「うわぁ……絶対昨日じゃなかったじゃん」
ムスッとして、カナタはガシガシと頭を掻いた。池内さんのせいだとでも、思っているのだろう。上手くフォローできずに、気まずい空気が流れた。
そうして沈黙する二人の間に、お待たせしました、と置かれた料理。ステーキの香ばしい匂いが漂い、「さ、食べよう」と私は早々にペンネを口に放った。カナタも渋々とではあるが、カトラリーを手に取る。仕事の話や両親のことに話題を変え、出来るだけ微笑みかけた。まずは、今日のミッションを遂行しないといけない。少しずつカナタも笑うようになって、ホッと一息。あぁ何度見ても、息子がお腹いっぱいご飯を食べている姿は、胸が一杯になる。
「カナタ。宏海のことは、とりあえず忘れて」
「いや、だって」
「いいの。とても大切なことだけれどね。これは、お母さんの話だから。そんなムスッとした顔をして、おじいちゃんとおぱあちゃんに会って欲しくないな」
「あ……そうだよね。ごめん」
「ううん。いいの。いいのよ。ありがとうね。色々面倒かけて。感謝してる。さぁ、コーヒー飲んで一息ついたら、会いに行こう」
コクリと頷いたカナタにホッとする。今夜は四人で食べに行こうか。それから、また何回か二人で一緒に行こう。母たちも話したいことはたくさんあるだろうけれど。少しずつ、少しずつ。焦ってはいけない。取り戻せない時間を埋めるのには、時間がかかるのだ。
きっとそうしているうちに、私の生活も変わるのだろう。宏海は、もう一緒に暮らしたくないのかな。あぁあ、住む部屋から探さないといけない。最低一度は、顔を合わせて話したいけれど、昨日の宏海を思うと、それすら受け入れてもらえるのか自信がない。申し訳ないけれど、匡に間に入ってもらおうか。面倒くせぇな、とか言うんだろうな。でも、仕方ない。もう一度だけでも、二人できちんと話せたら。
「うん」
「母さんだって、中川さんのこと好きじゃない。どうして」
「あ、いや。その後に言葉を続けるつもりだったの。ごめんなさい。少しだけ時間を貰えませんかって。そもそもね、私は今日のことで頭がいっぱいだったから。ごめんなさいって言った後、宏海は私に何も言わせてくれなかった。続きを言わないように、彼はずっと喋り続けた。私を家に送り届けるまで」
「うわぁ……絶対昨日じゃなかったじゃん」
ムスッとして、カナタはガシガシと頭を掻いた。池内さんのせいだとでも、思っているのだろう。上手くフォローできずに、気まずい空気が流れた。
そうして沈黙する二人の間に、お待たせしました、と置かれた料理。ステーキの香ばしい匂いが漂い、「さ、食べよう」と私は早々にペンネを口に放った。カナタも渋々とではあるが、カトラリーを手に取る。仕事の話や両親のことに話題を変え、出来るだけ微笑みかけた。まずは、今日のミッションを遂行しないといけない。少しずつカナタも笑うようになって、ホッと一息。あぁ何度見ても、息子がお腹いっぱいご飯を食べている姿は、胸が一杯になる。
「カナタ。宏海のことは、とりあえず忘れて」
「いや、だって」
「いいの。とても大切なことだけれどね。これは、お母さんの話だから。そんなムスッとした顔をして、おじいちゃんとおぱあちゃんに会って欲しくないな」
「あ……そうだよね。ごめん」
「ううん。いいの。いいのよ。ありがとうね。色々面倒かけて。感謝してる。さぁ、コーヒー飲んで一息ついたら、会いに行こう」
コクリと頷いたカナタにホッとする。今夜は四人で食べに行こうか。それから、また何回か二人で一緒に行こう。母たちも話したいことはたくさんあるだろうけれど。少しずつ、少しずつ。焦ってはいけない。取り戻せない時間を埋めるのには、時間がかかるのだ。
きっとそうしているうちに、私の生活も変わるのだろう。宏海は、もう一緒に暮らしたくないのかな。あぁあ、住む部屋から探さないといけない。最低一度は、顔を合わせて話したいけれど、昨日の宏海を思うと、それすら受け入れてもらえるのか自信がない。申し訳ないけれど、匡に間に入ってもらおうか。面倒くせぇな、とか言うんだろうな。でも、仕方ない。もう一度だけでも、二人できちんと話せたら。

