「どうぞ」
「ありがとう。ふふ、何か変な感じがするね」
「そうだねぇ。お家で飲んでるのと変わらないのに」
「あ、そのマグ使ってるんだ。私も病院で使ってるよ。でも、お揃い何だよなって思うとさ。やっぱり一緒にお家で使った方が良かったかなぁって思うんだよねぇ」
カナちゃんがここに居る。なんかちょっと、変な感じがするな。池内くんと会ったのは、本当に偶然だったのだろう。彼はきっと、僕の背を押すために連れてきたのだと思う。でも急だったし、まだ心の準備は何も出来ていない。早まって言ってしまったら、後悔するかもしれないし。慎重に、慎重に。
「実家から近いけど、この辺の友達はいなかったからなぁ。静かでいいね」
「そうだね。僕も小さい時は何度か来たけれど、そういう時って虫取りとかしかしてないしね。大人になって来てみて、あぁいいところだったんだなって思ったよ」
「大人にならないと分からないことって、あるものね。更に言えば、大人でも二十歳と五十じゃ全然違う。年を取ってみて、しみじみ感じることって、意外と多いわよねぇ」
マグを両手で持って、コーヒーを飲むカナちゃん。昔もこんな風にして飲んでたっけ。まだ若かった、あの頃。学生服を着て、何も怖いものなんてなかった気がする。きっとあの時だったなら、振られたって仲良くしていられた。あの狭い世界の中で、子どもなりの配慮を持って、トモダチを続けられただろう。でも……今は?
「庭もあるの?」
「あるよ。何も整えてないけど。林の方だから、広くは感じるかな」
「へぇぇ。そうなんだ。いいなぁ」
「そう?」
「うん。大型犬も飼えそうじゃない? 私、小さい頃の夢だったのよね。大型犬を飼うの」
そんなに広くはないけれど、ドッグランを作って。そこで犬を遊ばせながら、小さなテーブルでカナちゃんとお茶したりして。この先の幸せな未来を思い描いた。きっと楽しいだろうな。想像は見事に膨らむけれど、今はちょうど、それが現実になるのか否かの岐路に立っている。
「ありがとう。ふふ、何か変な感じがするね」
「そうだねぇ。お家で飲んでるのと変わらないのに」
「あ、そのマグ使ってるんだ。私も病院で使ってるよ。でも、お揃い何だよなって思うとさ。やっぱり一緒にお家で使った方が良かったかなぁって思うんだよねぇ」
カナちゃんがここに居る。なんかちょっと、変な感じがするな。池内くんと会ったのは、本当に偶然だったのだろう。彼はきっと、僕の背を押すために連れてきたのだと思う。でも急だったし、まだ心の準備は何も出来ていない。早まって言ってしまったら、後悔するかもしれないし。慎重に、慎重に。
「実家から近いけど、この辺の友達はいなかったからなぁ。静かでいいね」
「そうだね。僕も小さい時は何度か来たけれど、そういう時って虫取りとかしかしてないしね。大人になって来てみて、あぁいいところだったんだなって思ったよ」
「大人にならないと分からないことって、あるものね。更に言えば、大人でも二十歳と五十じゃ全然違う。年を取ってみて、しみじみ感じることって、意外と多いわよねぇ」
マグを両手で持って、コーヒーを飲むカナちゃん。昔もこんな風にして飲んでたっけ。まだ若かった、あの頃。学生服を着て、何も怖いものなんてなかった気がする。きっとあの時だったなら、振られたって仲良くしていられた。あの狭い世界の中で、子どもなりの配慮を持って、トモダチを続けられただろう。でも……今は?
「庭もあるの?」
「あるよ。何も整えてないけど。林の方だから、広くは感じるかな」
「へぇぇ。そうなんだ。いいなぁ」
「そう?」
「うん。大型犬も飼えそうじゃない? 私、小さい頃の夢だったのよね。大型犬を飼うの」
そんなに広くはないけれど、ドッグランを作って。そこで犬を遊ばせながら、小さなテーブルでカナちゃんとお茶したりして。この先の幸せな未来を思い描いた。きっと楽しいだろうな。想像は見事に膨らむけれど、今はちょうど、それが現実になるのか否かの岐路に立っている。

