「佐々木くん。僕、振られちゃうかも知れない」
「えぇ? なんてことを言うんですか。大丈夫ですよ」
特に母さんから何も聞いていない。いつもと変わらなかったように思う。二人にしか分からない、何かがあったということか。目の前に座る彼は、あからさまにずうんと沈んで肩を落としている。
「お二人のことを詳しく分かっているわけではないですけれど、中野さんにそんな話は聞きませんし。あっちの会社に行くと、彼女が居なくても話題にはなるんですよね。開発担当の方ですし。皆さん、大体が口を揃えて『旦那さんの作ったお弁当を幸せそうに食べている』って言いますよ」
「そう……幸せそうには、見えてるんだ」
あぁ、これはやばい。何がいけないんだ。気にしていた《《夜に連絡を取る相手》》のことだろうか。十中八九、それは俺《むすこ》だ。それが気に掛かっていたとしても、今、彼に伝えるわけにはいかないし。どうしたものか。母の気持ちは、彼の方を向いているというのに。
「私は実際に召し上がっているところを見たことがないので、どんな顔かってのはちょっと分からないんですけど」
「うん、そうだよね。ごめんね。弱音吐いちゃって。幼馴染にも愚痴って来たんだけどね。昇華出来なかったみたい。情けないねぇ」
そう言って、また苦笑する。ここまで落ち込むようなことを、母さんがしたのだろうか。でも母は確かに、彼のことが好きだと言っていた。ならば、これほどのダメージを受けるようなことってあるんだろうか。
「えぇ? なんてことを言うんですか。大丈夫ですよ」
特に母さんから何も聞いていない。いつもと変わらなかったように思う。二人にしか分からない、何かがあったということか。目の前に座る彼は、あからさまにずうんと沈んで肩を落としている。
「お二人のことを詳しく分かっているわけではないですけれど、中野さんにそんな話は聞きませんし。あっちの会社に行くと、彼女が居なくても話題にはなるんですよね。開発担当の方ですし。皆さん、大体が口を揃えて『旦那さんの作ったお弁当を幸せそうに食べている』って言いますよ」
「そう……幸せそうには、見えてるんだ」
あぁ、これはやばい。何がいけないんだ。気にしていた《《夜に連絡を取る相手》》のことだろうか。十中八九、それは俺《むすこ》だ。それが気に掛かっていたとしても、今、彼に伝えるわけにはいかないし。どうしたものか。母の気持ちは、彼の方を向いているというのに。
「私は実際に召し上がっているところを見たことがないので、どんな顔かってのはちょっと分からないんですけど」
「うん、そうだよね。ごめんね。弱音吐いちゃって。幼馴染にも愚痴って来たんだけどね。昇華出来なかったみたい。情けないねぇ」
そう言って、また苦笑する。ここまで落ち込むようなことを、母さんがしたのだろうか。でも母は確かに、彼のことが好きだと言っていた。ならば、これほどのダメージを受けるようなことってあるんだろうか。

