「カナちゃん。それはさ? 旦那さんと別れたことに、やっぱり後悔があるってこと?」
「へ? いや、全く。彼との間に、愛情が全くなかったとは言わないけれど。ただ夫婦生活って考えたら、つい、ね。でも、おばちゃんたちみたいに添い遂げるイメージは湧かないけどさ」
「そうなの?」
「まぁ離婚しちゃったから余計なんだろうけど。生活を共にするうちに、少しずつズレみたいなものが生じてね。私は仕事も家庭も大事だった。でも彼は、仕事よりも家庭に重きを置きたかった。違ってしまったのよ」

 私たちは、カナタがいたから五年も夫婦でいられたんだと思う。息子のために、家族のために。夫には感謝していたし、愛してもいた。だけれどいつからか、パパではなく佐々木エイタという男の気持ち(・・・・・・・・・・・・・・)を、私はきっと見失ってしまっていたのだ。

 彼はいつ、私と離婚を決めたのだろう。どういう経緯で、あの新しい妻と出会ったのだろう。きっとそれは、義父母が関わっている。姑を見れば分かる。あの男では、反論などできやしない。それでもあの人は、寝ていたカナタにサヨナラを言わせてくれた。それだけは、彼の中に残っていた僅かな私への愛情だったと思っている。