「そうだ、カナちゃん。イブが土曜日なんだけど、ケーキ食べる?」
「ケーキかぁ……あ、それならさ。ちょっといいワイン買って飲まない? 甘いのもそんなに食べられないし。宏海、何かお料理してくれるんでしょう?」
「作るよ。まだメニュー決めてないけどね。じゃあ、ワインにしよう」

 急に話の方向を、まぁくんのことから僕らの方へ向ける。おばちゃんが無事であると確認された今、大切なのは幼馴染じゃない。僕らの明日だ。

 まぁくんの話をこれ以上続けたら、急く感情が湧き出てしまう。早く彼女に気持ちを伝えなくちゃ。まぁくんにも、それは恋だと認めさせなくちゃ。空回りしそうな思いばかりが浮かんで、ただ不安なのだと気付く。腕時計の完成はもうすぐだ。きちんとタイミングを見て、彼女に渡したい。それから言うんだ。ただ素直な思いを。好きです、と。