「……正直言って、ブンタの行動もあったから、多少なりとも気になってしまうのは仕方ないと思うの。でも大事なのは、それを自分が認められるかよ」
「お、おう。どうした、カナコ」
「いや、匡だって私に言うでしょう? 煩いなぁって思ってたけどさ、最近思うのよ。恋愛云々って話じゃなくて、全てにおいて、私だけは私の気持ちから目を背けたらいけないなって。だから匡もさ、私たちに言わなくていいから。自分の気持ちに嘘は吐かないでね」

 おぉ、と匡は首を傾げながら返事する。おかしいなとでも思ったのだろうが、これは私の本心だ。宏海への気持ちを認めて、そしてカナタと再会出来た。過去の柵を少しずつ浄化させるにあたって、その考えが私を支えている。宏海への気持ちはきちんと伝えるつもりだ。だけれども、カナタの心に寄り添うのが第一。その次に自分のことを考えて、ケリを付けるんだ。

「あ、カレー屋のことは気付いてなかった?」
「おぉ、それな。少し前に聞かれたんだよ。 あの辺でやってたカレー屋知りませんかって。変な象が目印のカレー屋なんですけどって」
「そんなん匡の店じゃん」
「だろ。でもさ、言えなかったんだよな。ほら、泣いてたから。見られてたなんて、可哀想だろ」
「あぁそっか。確かに。大人が外で泣いたなんて、スルーして欲しいものね」

 変なところに気が利く、優しい男だ。だから何だかんだ言われたって、こうして友人を続けていられる。でも……だからこそ、私も彼には幸せになって欲しいと思う。それが例え、どんな結末になろうとも。