「さむ……」
夜になると外は、もうすんなりとこの言葉が出てくる時期になった。あっという間だ。あの子と再会して二ヶ月が経ち、辺りは冬の装いが始まっている。カナタとは色んな話を聞いて、色んな話をしてきた。でも彼は、離婚の全てを問うては来ない。勘の良い子だ。きっと、ぼんやりとでも気付いてしまったのだろう。心配はあるものの、問うに問えない事柄だ。私はただ、そのモヤモヤを心の内に留めるしかなかった。
「いらっしゃい……って、カナコかよ」
「悪いわね。匡、お腹空いた」
「はぁ? もう店仕舞いだぞ。宏海はどうした」
「あぁ、何か今夜も帰りが遅いんだって……」
最近、宏海の帰りが遅い。自炊は出来ないから、大抵はコンビニで済ませるんだけれど。今夜はちょっと、確認がしたかった。ここに宏海がいるんじゃないか、って。
「あぁ、クリスマス前だから忙しいのかもな」
「あ、クリスマスか。いつもそうだったっけ」
「もう少し、宏海に興味持てよ」
「ないわけじゃ……ないのよ。記憶されてないだけで」
モジモジと下を向いた。
ここに宏海がいないことで、ようやく私は本当に仕事なんだと思い始める。別の女だとか、男だとかが考えられなくもないが、宏海はそこまで不躾な男でもない。仮にそうだとしたら、もう少し分かりやすいだろうし、その時はきっと言ってくれるはずだ。あぁどうして冷静になればすぐにそう思えるのに、ここに来るまで考えられなかったのだろう。それほど、余裕がなかったのだろうか。
少し前まで、宏海はたくさん話をしてくれていた。最近仕事で会った人のこととか、素敵な写真を見つけただとか。食卓を楽しく囲んでいたし、私も彼の仕事に興味を持って聞いていたつもりだった。それなのに、突然一緒に夕食を摂れないことが多くなってしまった。きっと、彼はそれについても細かく説明をしてくれていたのだと思う。多分、私がきちんと聞いていなかったのだ。カナタとの再構築に時間を掛けていて、宏海のことが若干蔑ろになっていたのは否めない。家に帰れば温かい食事と彼がいることが当たり前だった。急に一緒にいる時間が減ってから、こうして慌てているのである。彼とは同居人であって恋人ではない。本来ならば、それ以上の欲を出してはいけないというのに。
夜になると外は、もうすんなりとこの言葉が出てくる時期になった。あっという間だ。あの子と再会して二ヶ月が経ち、辺りは冬の装いが始まっている。カナタとは色んな話を聞いて、色んな話をしてきた。でも彼は、離婚の全てを問うては来ない。勘の良い子だ。きっと、ぼんやりとでも気付いてしまったのだろう。心配はあるものの、問うに問えない事柄だ。私はただ、そのモヤモヤを心の内に留めるしかなかった。
「いらっしゃい……って、カナコかよ」
「悪いわね。匡、お腹空いた」
「はぁ? もう店仕舞いだぞ。宏海はどうした」
「あぁ、何か今夜も帰りが遅いんだって……」
最近、宏海の帰りが遅い。自炊は出来ないから、大抵はコンビニで済ませるんだけれど。今夜はちょっと、確認がしたかった。ここに宏海がいるんじゃないか、って。
「あぁ、クリスマス前だから忙しいのかもな」
「あ、クリスマスか。いつもそうだったっけ」
「もう少し、宏海に興味持てよ」
「ないわけじゃ……ないのよ。記憶されてないだけで」
モジモジと下を向いた。
ここに宏海がいないことで、ようやく私は本当に仕事なんだと思い始める。別の女だとか、男だとかが考えられなくもないが、宏海はそこまで不躾な男でもない。仮にそうだとしたら、もう少し分かりやすいだろうし、その時はきっと言ってくれるはずだ。あぁどうして冷静になればすぐにそう思えるのに、ここに来るまで考えられなかったのだろう。それほど、余裕がなかったのだろうか。
少し前まで、宏海はたくさん話をしてくれていた。最近仕事で会った人のこととか、素敵な写真を見つけただとか。食卓を楽しく囲んでいたし、私も彼の仕事に興味を持って聞いていたつもりだった。それなのに、突然一緒に夕食を摂れないことが多くなってしまった。きっと、彼はそれについても細かく説明をしてくれていたのだと思う。多分、私がきちんと聞いていなかったのだ。カナタとの再構築に時間を掛けていて、宏海のことが若干蔑ろになっていたのは否めない。家に帰れば温かい食事と彼がいることが当たり前だった。急に一緒にいる時間が減ってから、こうして慌てているのである。彼とは同居人であって恋人ではない。本来ならば、それ以上の欲を出してはいけないというのに。

