「ねぇねぇ、丈くん。その腕時計って、どこかのブランド?」
「時計? これは……アンティークだったかなぁ。見た目が好みで買ったんだけど、バンドがすぐ切れちゃってね。そこは新しいんだけど」
「アンティーク……アンティークか」

 何度も描いたけど、しっくりこなくて。文字盤も自分で作ってみるか、買うか決まらずにいた。アンティークは一つも考えてなかったな。プロポーズにそれってどうだろうと思うけれど、参考にするでもいいし、色々見てみよう。新しい視点は大事だ。

「丈くん、ありがとう」
「ん。よく分かんないけど、いえいえ」

 クッキーを頬張ったまま、丈くんは答える。もう既に次のクッキーを手にして。ふふふ、と僕もクッキーに手を伸ばす。穏やかな、のんびりした時間だった。
 最近、池内くんや佐々木くんの話をカナちゃんとする。相手がどういう人か、分かり合えるようになったから。それが今は嬉しい。いつか、丈くんも紹介したいな。僕の周りの色んな人や色んな物を、彼女にも知って欲しいし、僕も知りたい。だから今日も、カナちゃんとたくさん話をしよう。たくさん、たくさん話をしよう。