『そうなんだ。何となく分かった』
『母さんにとって、中川さんはただの同居人ってこと?』

 本当は、好きなの? と問うてみたかった。でも、聞けない。ただの好奇心で、母との距離を広げたくない。だって普通なら、仮に息子に問われたところで真面目に答えないだろう。この件は、どう聞いたって返ってこないと思ったし、実際に返ってこなかった。

 だが、今朝のことだ。大きな欠伸をしながら、母のメッセージを受け取った出勤前の駅のホーム。俺はそれで、シャキッと目が冷めたのである。

『確かに同居人だね。でもね、母さんは彼のことが好きだよ』

 この返信までの時間。それが余計に彼女の決意表明のようだった。だって俺は、好きかどうか問うたわけじゃない。これはきっと、嘘じゃない本心なんだろうと思った。ただ、つまりは思い合っているのに、それをどちらも伝えてはいない。勇気が出ないということなのだろうか。それとも、まだ知らない何かがハードルになっているのだろうか。朝から悶々と考えている。それで二人は幸せなのだろうか、と。