「ねぇ、母さん? 僕を……捨てたわけじゃないって言ったよね」
カナタがそう言ったのは、ある程度腹が満たされてからだった。直ぐに返事が出来ないほど、体が強張るのが分かる。だが、話す時が来た。覚悟はしてきたつもりだ。
彼が事実を受け入れられなくとも、真実を知って欲しい。ママはカナタを捨てたわけじゃないと、信じてもらいたい。だから、出来るだけ隠し事はしない。息子に誠実でありたいと思っている。
「もちろんよ。マ……母さんはね、あなたと離れたくなかった。だから、出来る限りのことはした。ただ……力が足りなくてね。あの頃はまだ、本当に世間知らずだったのね。借りられる手はすべて借りたつもりだったけれど、結局は何もかも後手に回ってしまった。結果、上手に抗うことも出来ず、あなたを手放さなくちゃいけなくなってしまった……本当に抵抗したんだけどね」
真実を全て口にしたところで、許されるとは思っていない。気付けば、無意識に目を逸らしている。寂しい思いをさせてしまったという後ろめたさが、私の中で巨大に膨れ上がっている。
「うん。母さんは……それで、う……浮気してたの?」
「いいえ。それだけは断言します」
食い気味に答えていた。それだけは絶対に違う、と。
「本当に? 僕とパパのことが嫌になって、浮気してたって……」
「おばあちゃんが言ってた?」
スルッと言ってしまった言葉に、カナタが頷く。やはりそう刷り込まれていたか。覚悟はしていたが、腹立たしくて両手を強く握り込んだ。食い込む爪が痛い。
カナタがそう言ったのは、ある程度腹が満たされてからだった。直ぐに返事が出来ないほど、体が強張るのが分かる。だが、話す時が来た。覚悟はしてきたつもりだ。
彼が事実を受け入れられなくとも、真実を知って欲しい。ママはカナタを捨てたわけじゃないと、信じてもらいたい。だから、出来るだけ隠し事はしない。息子に誠実でありたいと思っている。
「もちろんよ。マ……母さんはね、あなたと離れたくなかった。だから、出来る限りのことはした。ただ……力が足りなくてね。あの頃はまだ、本当に世間知らずだったのね。借りられる手はすべて借りたつもりだったけれど、結局は何もかも後手に回ってしまった。結果、上手に抗うことも出来ず、あなたを手放さなくちゃいけなくなってしまった……本当に抵抗したんだけどね」
真実を全て口にしたところで、許されるとは思っていない。気付けば、無意識に目を逸らしている。寂しい思いをさせてしまったという後ろめたさが、私の中で巨大に膨れ上がっている。
「うん。母さんは……それで、う……浮気してたの?」
「いいえ。それだけは断言します」
食い気味に答えていた。それだけは絶対に違う、と。
「本当に? 僕とパパのことが嫌になって、浮気してたって……」
「おばあちゃんが言ってた?」
スルッと言ってしまった言葉に、カナタが頷く。やはりそう刷り込まれていたか。覚悟はしていたが、腹立たしくて両手を強く握り込んだ。食い込む爪が痛い。

