「さてと、ちょっとこれ見てもらっていいかな」

 食事がある程度終えたところで、彼にスケッチブックを提示した。この話を貰ってから描き溜めたデッサンである。

「今回は木工作家さんとってことだから、どこまで出来るか分からないんだけどね。木枠に革をつけたトレイとか、大物もいけるならスツールとか? そういうところかなぁと思ってるの。それと僕は帆布も縫うから、バッグに木工タグとか……えっと、こういうのもね。面白いかなって考えてて」

 顎を揉みながら、それを覗き込む佐々木くん。初めて自分の案を提示する時は、相手が誰であろうと緊張する。彼がどんな反応を示すのか、ドキドキと胸を鳴らした。

「この帆布を使うって考え、良いなと思います。中川さんって革作家さんのイメージが強いですから、こういうのもありますよってアピールにもなりますし」
「なるほど。確かに、鞄とかアクセサリーなんかも革が多いか」
「是非、帆布をメインにしてみませんか。と言っても、僕だけの意見でどうこうできないですけど……この後行くのが、ちょうど相手方なので。彼の意見も聞いてみますね。これ、写真撮っても大丈夫ですか」
「うん。いいよ。よろしくお願いします」

 スマホを操作して、佐々木くんが写真を撮っていく。食べ終わっちゃったけど、と小さく舌を出してから、ステーキの乗っていたプレートも撮り収めた。こうしてすぐに手軽に撮ることが出来るようになったのも、携帯が進化した結果だ。僕は残りのパスタをクルクルとフォークに巻きつけながら、いい時代になったな、などと考え耽る。カナちゃんは今頃、向こうで美味しいランチでも食べているだろうか。