メガネをはずしちゃいけません!

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________……



___”お言葉ですが先輩。どうして、美奈がミスコンに出てはいけないんですか?先輩に迷惑なんてかけてないですよね?”


___”なんで美奈が人前でメガネを外す自由を、先輩に奪われないといけないんですか?そのことで先輩にどんな問題があるんですか?”


…あの生意気な1年の女子に言われた言葉が
何度も何度も俺の頭の中を駆け巡る。

それでも、俺はその答えを出せずに、
音楽室の窓際で立ちすくんでいた。



帝「あいつのことを、沙羅とは違うって分かってないのか…」


そして、気づけば翔太に、
…助けを求めて質問していた。



翔太に以前、釘を刺されてからも、
俺なりに、あいつのことを考えてみた。
俺はあいつをどう想ってるのか……
でも、どれだけ考えても、答えがでない。




風間「……帝はさ…、美奈ちゃんのこと、どのくらい知ってるの?」


帝「あいつのこと…?」



俺の質問に、質問で返してきた翔太。
その質問に俺は思わず言葉に詰まった。


風間「そう、帝が知ってること、教えてよ。」



帝「………」



俺……
あいつのこと、何も知らない……


翔太に教えられるようなこと、
何も……___




___”苦手なら無理して乗らなくてもいいですよ。私だけ乗れれば。”



あ………



帝「…絶叫…」


風間「え…?」


帝「…あいつ…絶叫系のアトラクションが好き…らしい…」



俺がそう言うと、
翔太はなぜか嬉しそうに笑った。


風間「なんだ…。ちゃんと知ってるじゃん。」


帝「……」


風間「絶叫アトラクションといえばさ…帝も、沙羅も、絶叫系大っ嫌いだったよね。」


そういって笑う翔太。


風間「俺は好きだから、いっつも3人で遊園地いくと、ひとりで乗ってたっけ。」


帝「……そうだったな…」


風間「美奈ちゃんと遊園地にでも行ったの?」


帝「……あぁ。」


お詫びに誘ったとは絶対に言わないけどな。
面白がられて笑われるのがオチだ。


風間「へぇ…で、帝は、まさか一緒に絶叫アトラクション乗ったの…?」


帝「……そりゃあ乗るだろ。」


風間「どうして…?いつもは絶対乗らないじゃん。」


帝「それは___」



俺は思わず出かけた言葉に
自分でも驚いた。



__”ただ、あいつと一緒に乗りたいと思ったから”



そう。
俺は、あの日。
あの遊園地に行った日。
たしかに”美奈”と一緒に過ごした。


沙羅と過ごす時間とは
全く違う時間を。


沙羅は絶叫マシンになんか絶対に乗らないし、
そもそも、そんなに遊園地が好きじゃない。
周りの目を見てオドオドして不安そうにすることも絶対になかった。



でも俺はあの日を、
あいつと過ごした1日を楽しかった、と思っていた。

もっと知りたいと思っていた。
だから、苦手な絶叫アトラクションにだって乗ったんだ。


もっと知りたい……


俺はまだまだあいつのことを知らないんだ。


”沙羅の代わり”なんかじゃなく、
”美奈”という一人の女のことを
ちゃんと知りたい…


……そう思ったとき、さっきまでは
霧がかかっているみたいにモヤモヤしていた頭の中がすっきりした。



そうか……これから知っていけばいいんだ…。
分からないなら、知ればいい。…単純だ。


帝「翔太……お前…」



風間「え…」


帝「もっと分かりやすく教えろよ。」


その言葉に、
いたずらっぽい笑顔を返す翔太。


風間「あ…もしかしてやっと気づいた?」


帝「うるせぇ…」



まずは、ちゃんと理解しよう。
よく見てみよう。あいつのことを。
そうじゃなきゃ、自分の気持ちなんて分かるはずがない。




キーンコーンカーンコーン…__


風間「え!もう昼休み終わり?!帝のせいで弁当食べ損ねたじゃんかー。」



帝「ちょっと食べなかったくらいで大げさだな。」


風間「育ち盛りの高校生男児の食欲をなめるなよ。」


そんなどうでもいい会話を交わしながら、
俺たちは音楽室を後にしたのだった。