────── とある日、七瀬ん家に来ていた。
「あ。つーかさ、ご褒美は?」
「は?なに、“ご褒美”って」
「はあぁん?お前、忘れたとは言わせねーよ?」
「忘れたー」
「お前、ナメてんの?」
「覚えてないしー」
なんか忙しく部屋の片付けをしている七瀬。俺の問い掛けに適当に返事してやがる。
・・・・七瀬が連れ去れたあの日、俺の唇に手を押し当てて……『ねえ、九条……九条が絶対に喜ぶものあげるから……先に帰ってて?ね?』『我慢できたら……ご褒美あげる。だから、先に帰ってて?ちゃんと連絡するから……ね?』とか言ってたのどこの誰だっつーの!!
「俺の絶対に喜ぶものあげるから、先に帰ってろってお前が脅してきた時があったろ」
「……ああ、拐われた日ね~!確かに何か言ったような気がするわー」
“ああ、記念日ね~!”的なノリやめてくんね?
あん時、俺マジで生きた心地しなかったんだから。
「で?ねえの?さっさと寄越せよ、ご褒美」
・・・・ま、間違えなくキスか……あわよくば……いよいよかぁ……?いやぁ、長かったなぁ……マジで。
俺、どんだけヤってないっけ?
────── いや、待てよ。
なんかすんげえ緊張すんだけど。
なんだこれ。なんでこんな緊張してんだ?童貞でもあるまいし。
・・・・いや、理由くらい分かってんだろ。
“好きな女を抱くのはハジメテだから”……どう考えてもコレだろうな。
ああーーやべーー。マジで心臓いてぇ。
まず、何をどうすればいいんだっけか?
今までいかに自分が適当に女を抱いていたのかがよく分かる。我ながら“クソ”だなとしか思わん。
つーか、ここで抱くのはやべーか?
こんなボロ家、外でヤってんのと変わんねーだろ。声ダダ漏れじゃね?
いや、とりあえず今日は家に誰も居ねえし、まあ……なんとか声を抑えてもらって~的な?
「なぁ、七瀬」
「んー?」
「お前ゴム持ってるー?」
「ああ、うん。たくさんあるよー?」