「……そうですか。では、失礼致します」


ソファーから立ち上がって、チラッと九条を見てみたけど、あたしに背を向けているから何も見えない。

ま、帰れって言われてるし、特にしてあげれることもないから天馬に戻ろ。

部屋から出て、長い廊下を歩き玄関に向かう。

靴を履いて、ドアノブに手をかけた時だった。


「七瀬様!!」

「あ、霧島さん。お邪魔しまっ……」

「どちらへ!?」

「……どちらへって、天馬に戻ろうかと」

「七瀬様、一生のお願いです。柊弥様の体調が良くなるまで、どうかこの屋敷に留まってはくれませんか?」


・・・・イコール“泊まってくれ”ということ?……いや、いやいやいや!!無理無理!!絶っ対にムリ!!

九条の家に泊まるなんて危険すぎるし、なにより嫌すぎる。


「いや、霧島さん。さすがに年頃の男女が一つ屋根の下っていうのは如何なものかと。それにウチの両親がそんなこと許さっ……」

「既に許可は取ってあります。快く承諾していただきました。着替えも準備してありますので」


ニコッと微笑んでいる霧島さんから、“泊まれよ、泊まらないという選択肢なんて、貴様にはこれっぽっちもねえぞ?”という、ただならぬプレッシャーをひしひしと感じる。


「……は、はい」


・・・・あーーもうっ!!なんなの!?


こんなの、一難去ってまた一難すぎるでしょ!!