(ティエリー)」に似た男子は“本物の王子様”だったの!
 信じられない!!

 “王子様”!本物!

『堅苦しいのは嫌いなんだ。レーモンと呼んでくれ。僕もソニアと呼ぶから』

 きゃ~~~!!
 やっぱり“本物の王子様”は違う!
 だって他の男子なら「名前も可愛いね、ソニア」って勝手に呼び捨てだったもの!そこからして違う!

 それだけじゃない。
 
 レーモンは他の男子と違って私のすることを肯定してくれた。
 
 みんなと仲良くするのは間違ってないって!
 意地悪は良くないって!
 
 やっぱりね!
 私は間違ってなかった!
 間違ってたのは彼女達の方!

 だから私は間違ってなかったと証明するために今まで通りに振る舞ったわ。
 勿論、レーモンが傍にいる時はレーモンを第一に優先する。当然でしょ?だって他の男子は私を一番に優先しない時があるんだもの。レーモンが隣にいると誰も何も言わない。意地悪だってされないし、酷い事だって言われなくなる。レーモンが傍にいるだけでとっても心強~~い!! 私は正しいんだ。って、そう思ったわ。

 なのに、なんで?
 なんでレーモンまで婚約者がいるの?なんでその事をレーモンじゃなくて別の人から聞かされないといけないの?

 そんなのおかしい!

 だってレーモンの傍にいるのは私だよ?
 婚約者の存在なんて全くなかった!ずっと前から婚約してた?知らないよ!そんなこと!!誰よそれ!!?



「あ、あれが……レーモンの婚約者……」

「あ~~そうだな。もういいだろ。一目見るだけだっていうからコッソリ連れてきたんだ。そろそろ出ないと不味い」

 後ろでグチャグチャと訳の分からない事を言う男友達。
 もう!少し静かにしてよ!逆に見つかっちゃうでしょ!!気づかれたら元も子もないじゃないの!!

「おい!ほんとにヤバいんだって……早くしろよ」

 そんな事を言う男友達は最終的に私の腕を掴んでムリヤリ会場の外に連れ出した。
 信じられない。最低よ!!

「いいか、今日の事は何も言うなよ。勿論、公爵令嬢を見に来たなんて絶対に言うな」

「解ってる」

「ならいいが。はぁ~~~。約束だったから連れて来たが、本当なら謹慎ものなんだからな」

「解ってるって!」

 そうして馬車に乗せられて帰宅した。



 

 ずるい……。
 ずるい、ずるい、ずるい!!

 無性に腹が立つ!

 たまたま公爵家に生まれただけでレーモンの婚約者になった女、アリエノール・ラヌルフ公爵令嬢。
 確かに綺麗だった。
 見た感じからして上品で……だけど……だけど……。レーモンだって言ってた。婚約者は歳の割にしっかりし過ぎているって。それってつまり落ち着き過ぎてるって事でしょ?一緒に居てつまらないって事でしょ?好きなわけじゃないって事でしょ?

 だったら私でもいいじゃない!

 私の方が歳だって近いし、顔だって私ならレーモンの横に並んでもお似合いじゃない。
 それに、あの公爵令嬢ってレーモンを好きなようにみえない。だって好きならレーモンを放っておかないでしょう?婚約者だからって安心してレーモンを放っておいてるに違いないわよ。絶対、そうよ!間違いないわ!!

 レーモンだって言ってた。彼女とは親が決めた婚約者だって。それってレーモンの為にならない!だって好き合ってない相手となんて……。公爵令嬢はちっともレーモンの事を思ってない! だったら大丈夫よ!私にだって可能性はあるわ!! 私ならレーモンのこと好きだし、大事にする!

 公爵令嬢がいなくなってくれるのが一番良いんだけど、そんな上手くはいかない。あれこれ動いていると、レーモンと公爵令嬢の婚約が白紙になった!

 そしてレーモンがプロポーズしてくれたの!
 私が選ばれたんだわ!!