「お前らが何かやらかすとは思わないけどな。もしもの予防線は無いよりはいいだろ」

「でもそれって先輩が卒業してしまったら、残された私達には効果無いですよね?」

「言っただろ。お前らが俺に従ってさえいれば俺が守ってやるって」

「卒業したら終わりじゃないですか」

「砂雪。お前の代までは守ってやるよ。俺の目の前に居ない奴のことなんか知ったこっちゃないけど。一度俺の息がかかった奴までは保証してやる。その代わり、一生お前は俺の物ってことだけど」

「は、一生?」

「一生だ」

「カナデさん、その脅しはヤバイですよ。それに別に私達は学園に酷いことをされてるわけでもないですし」

戸田さんが本郷先輩に二杯目の紅茶を注ぎながら言った。

「でもまぁ、生きやすいのは確かよね」

鈴城さんは相変わらず軽い調子でファイルをめくった。

「えーっと、それで?今日の依頼はーっと…」

「そうそう、依頼ってなんですか?」

「今日は…これね」

鈴城さんがファイルをみんなのテーブルに置いた。

会長席は、校長室にあるような机とふかふかのチェア。

それ以外のみんなの机も一枚板の重厚な木のテーブルで厚みが凄い。

ソファはコの字で硬め。
作業をするならふかふかよりもラクかもしれない。

みんなでファイルを覗き込む。

依頼名、「美術室の恋」。

「美術室の恋?」

「ロマンチックだね」

言いながら、長谷川さんは書記ノートに「ロマンチックな恋」って書いた。

「これは依頼を調査しながら書き込んでいって、最後にまとめて理事長に提出するの」

「ちゃんと書記さんのお仕事ですね!」

「まぁねー」

「このタイトルはなんですかね」

「それはね、たまに居るのよ。そうやって物語みたいにして依頼してくるロマンチストさんが」

「へー。依頼内容はなんですか?」

「えーっと…」