どれくらいの時間。
わたしはバイクに乗せられているんだろう。
橋がある川沿いが見えて。
「降りていいぞ」
運転していた男は、そう言うと同時に。
川にそって、ピタリとバイクを停車した。
ヘルメットで顔は誰だかわからないけれど。
わたしは跨っていたバイクから降り。
ペコリと頭を下げて、一応お礼を言う。
「え、と。ありがとうございます」
「……別に」
「あの、お礼がしたいので名前だけでも……」
「……いらない」
「そんなの、わたしの気がすまないんです……っ!」
すると、男はため息を吐いて。
ヘルメットを脱いだ瞬間。
わたしは思わず、固まってしまう。
だって、わたしを助けてくれた男の正体はーー。
「さっき会ったばかりなのに、もう声を忘れているとはな」
わたしを『犯人』と言ったペンダントの男だった。
「え、うそでしょ……!!?」
「フッ、驚いたか?」
動揺するわたしをよそに。
バイクに跨った長い脚を動かして。
男は、地面に降りた。