「だから、お願いです…。目を、覚ましてください…」
抱きしめられていて顔は見えないが、涙を流していると思われる震えた声で告げられた内容は私の頭に大きな衝撃を与えた。
私はたまに起こっていためまいを感じ始め、それが段々と強くなっていく。
前野くんは体の力が抜けていく私の体を必死に支えてくれた。
目を…覚ます…私がいるここは一体、どこ?
目がくらくらする中、私の頭の中には様々な光景が思い出されてきた。
嘘だ、そんなの嘘だ。だって、私の毎日はこんなに幸せなはず…こんな記憶、知らない。
「僕が守ります…!だから、目を覚ましてください…」
前野くんは何を言っているの…?この頭に浮かんだ記憶は何?
混乱している中、ここにいるはずのない人の声がした。
「ダメだよ、ゆりあはずっとここにいるんだ」

