君と二度目の恋に落ちたら

中の様子を見て前野くんは「大丈夫ですか?」と気を遣ってくれたが、私は何も気にすることはなかったので「大丈夫です。いきましょう」と答えた。

店内に入るとお店の人に案内されて、私たちは奥の角っこにある四人掛けのテーブルに通された。

「ソファの方、どうぞ」

前野くんは椅子に自分の手をかけて、私に奥側にあるソファの席を譲ってくれた。

「あ、ありがとうございます…」

ちょっとした気遣いに私は照れながらお礼を言ってソファに座った。

そもそも男の子とこうして2人きりでご飯を食べに来ることすら初めてのことだったので、このシチュエーションだけでもドキドキしてしまう。

平静を装いながらテーブルの端に置かれたメニューブックを2冊手に取り、1冊を前野くんに手渡す。そして、私はパスタを、前野くんは唐揚げ定食を注文した。

料理が到着するまで私たちは何気ない会話を楽しんだ。今日はいつもと違って長く一緒にいるので、話す内容に困ってしまわないかという心配が少しあったが、それは杞憂に終わったようだ。なんだかんだで話は弾み、とても居心地がいいと感じた。

「文化祭は平日開催じゃないですか。けど、私が劇で主役をするって知ったお父さんが有給とって絶対に見に来るって言うんですよ。恥ずかしいから来ないでほしいんですけど、全然言うこと聞いてくれなくて…」

「いいお父さんじゃないですか」

前野くんは笑顔でしみじみとそう言ってくれたが、高校生にもなった娘の文化祭のためにわざわざ有給までとってくるものだろうかと思い、私はまだ父が文化祭に来ることには反対だった。

「お待たせしました。こちら唐揚げ定食でございます…」

話に夢中になっていると2人が注文した料理が到着した。私たちは小さく「いただきます…」と手を合わせて食事を始めた。