君と二度目の恋に落ちたら

夏休みで人が少ない校舎の廊下を私は走った。廊下を走るということをしたのは、記憶がある中でも初めてだったかもしれない。

お願い、まだいて…と思いながら走り、自販機のそばの角を曲がった時、確かにそこに人が立っていた。それは前野くんで間違いなかった。

前野くんは自販機の正面の壁に背中をもたれ、少しうつ向いて立っていた。

「前野くん!」

私は自分が出そうとした声のボリュームよりもかなり大きな声で名前を呼んでしまった。少し、しまったと思ったが、当然前野くんにもはっきりと聞こえていて、こちらの方を見た。

こちらを見た前野くんの表情は驚きの感情を見せていた。

「平…松さん…」

私は少し違和感を覚えた。私の声が大きすぎたから驚かせてしまったのだと思ったが、前野くんは異常に驚いている様子だった。そんなに声が大き過ぎただろうかと思っていると、前野くんの表情が一瞬崩れた気がした。

それは私には涙を堪えたような顔に思えた。

だが、前野くんはすぐに笑顔になって「お疲れ様です」と私に言った。私も前野くんに笑顔を向けて「お疲れ様です」と返す。

「もしかして結構待たせちゃいましたか?」

「いや、そんなに自分のクラスが終わってから時間経ってないですよ」

「そっか、それならよかった…」

私は来る前には前野くんが帰ってしまっていたらどうしようと不安だったが、長いこと待たせてしまっていても申し訳なかったので安堵した。