君と二度目の恋に落ちたら

「絶対、見ますね」

前野くんは少し意地悪そうな顔をしてそう言った。私はそんな前野くんに思わず、ムッとした表情を見せてしまった。それを見た前野くんはすごく楽しそうに声を出して笑っていた。

玄関にたどり着いて、各々の靴を取り出し、それを履く。玄関まで、ということで最初は一緒に歩き始めたが、ここでバイバイするのも変な話だよね…と内心考えながら、私たちは言葉で示し合わせることはしないが、玄関を出てからも一緒に歩き、校門を目指した。

「前野くんのところの演目は何ですか?」

「あー、自分のところは完全にオリジナルの脚本なんですよ。コメディーをやるって話で、まだ全体像はよくわかってないです」

「オリジナル…すごいですね!」

「内輪ノリで終わらないといいんですけどね…」

「うちは『シンデレラ』なんですけど、文芸部の子がそれをアレンジして脚本を書いてくれることになってて…。どういう脚本になるのかわからないんですけど、宇宙人とか宇宙警察隊とか謎の役がいるんですよ」

「え、全然シンデレラと宇宙人、結びつかないっす」

各々のクラスの演目の話を笑いながらしていると、あっという間に校門にたどり着いてしまった。2人とも立ち止まり、互いの顔を見た。そして私から口を開いた。

「帰り道、どっちですか?」

私は校門の外の左右を指さした。前野くんは「あっちです」と自分の帰る方向を指す。

「…逆ですね」

本当に短い時間だった。いつもの自販機での会話に比べたら長い時間話をしていたが、もう少し話していたいと願ってしまった。だけど、私はこれ以上の勇気を出すことはできなかった。

「じゃあ、また」

手を振り、私たちはお互いの帰路に足を伸ばした。