君と二度目の恋に落ちたら

私は前野くんの笑顔に少しときめきながら、少しだけ勇気を出してみることにした。

「もし、もう帰るんだったら一緒に玄関まで行きません?」

ここから玄関まではそう遠くもないが、少し歩いた先にある。私の提案に前野くんは笑顔で「はい」と答えてくれた。

相変わらず色んな方向から部活の声や音が聞こえてきていたが、前野くんと玄関までの道のりを歩いている時は前野くんがいる右側に神経が尖っていた。

初めて前野くんの隣を歩いた。ただ話をしている時も大きいなと思っていたが、隣に並んでみるとより際立って自分との身長差を実感することができた。

私は身長が150cmしかないので他の子より小さい方だが、前野くんは前野くんで背が高い方なのだと思う。この身長差にすら私はなんだかときめいてしまった。

「文化祭…」

身長差のことに気をとられていたところに前野くんが話し始めたので、少しびっくりしてしまった。

「文化祭?」

「僕はクラスでやる劇の裏方なんですが、平松さんのクラスの出し物…見れたらいいな…」

前野くんは進行方向をまっすぐ見ながらそう言った。私は思わず顔を赤くしてしまったので、どうかこのままこちらを見ないでほしいと思った。

「裏方なんだ…羨ましいな。私も裏方志望だったんだけど、なんでか主役をすることになっちゃって…」

「裏方と主役って、全然違いすぎません?」

前野くんは笑いながらこちらを見た。ああ、どうか顔が赤くなっていることがバレませんようにと思いながら、「本当に…どうしてそうなっちゃったんだろ」と言って手で顔を少し隠した。