君と二度目の恋に落ちたら

学年ごとで輪になってフォークダンスを踊るので、全員と踊る順番が回てくることはないため、好きな人とフォークダンスを踊るには根回しが必要になってくる。

基本的にクラスごとに出席番号順で並び、それでぐるっと円を作るのだが、度を越えた騒ぎを起こさなければ、一部並び順を勝手に変えても先生たちも黙認してくれるらしい。

通常とは違うところに並べば、「こいつ、好きな人を呼び出すつもりなんだ」とバレバレなため、実行するにはかなりの勇気が必要になってくる。そして、運が悪ければ相手も通常と違う場所に並び、すれ違ってしまう可能性もあるという。

「ゆりあはやっぱり根回しはしないの?」

もかが私にこのことを確認してくるのは二度目だ。一度目は初めてもかがこの言い伝えを私に教えてくれた時だった。

「しないよ」

私にそんなことをする勇気もなければ、今はまだそんな段階でもないと思っている。

前野くんとは自販機のところで会えたら少し会話をするが、それ以外で言葉を交わすことはないし、まだ連絡先すら知らないのだ。告白をする前にまだまだ踏むべき段階が残り過ぎている。

「でも、せっかくだから文化祭で距離が縮まればいいのにね」

「うーん…」

当たり障りのない会話しかできていない今、私は自分がどう動けばいいのか全くわからないのだ。拒絶をされるわけでもなく、むしろ好感触なことはわかっているが、その一歩先に出ることはできない。とにかく勇気がないのだ。