君と二度目の恋に落ちたら

しかし、体育の授業の時と同じく、話題が思い浮かばない。虚しく時が過ぎるばかりで己の話題作りのなさを恨んでいると、また前野くんの方から口を開いてくれた。

「ここのコーヒーって、他の自販機に比べて少しだけ安いんですよね…」

「え?あ、そうなんですか…それはここに買いに来るようになりますよね」

「自分、あんまりこっちの校舎には用事がないんで、掃除の時間の時にたまたま気が付いたんですけど」

「なるほどですね…。私は音楽の授業でこっちに来た時に自販機があるな~って気が付きました」

結局のところ、自販機の話しかできていないがこうして言葉を交わせていることにほわほわとした高揚感を感じた。

前野くんはコーヒーを飲み上げたようで、自販機横のゴミ箱に缶を捨てた。そして、ゴミ箱の方に顔を向けたまま恥ずかしそうにぽつりと話した。

「…普段はその場で飲んだりしてないんですが、待ち伏せしたみたいになっちゃってすみません…」

前野くんは気まずさを感じているのか、私の方を見ない。しかし、私には今前野くんが感じている気持ちを痛いほど理解できていると思う。ここに到着する直前に時間調整をしても大丈夫かと考えていたのはバレた時に恥ずかしいという気持ちと、相手に気持ち悪がられないかという不安があったのだ。

「はっきりと約束、とまではいかないですが…体育の授業の時に声をかけてくれたのは、待ち合わせの意味もあったのかなって…私は思ってました…」

私がそんな風に言うと彼は少し安心したような表情でようやくこちらを見た。

「よかった…。言葉足らずでしたが、自分もそのつもりもあったので…」

彼の発言の一つ一つにほんのり動揺とドキドキを感じる。これまで自分から言葉を発することに躊躇いがあったが、少しだけ勇気を出してみることにした。

「私、毎日ここに来ているわけではないんですが、もしまたここで会ったら…今日みたいに少しお話ができたら嬉しいです…」