――金欲しさに一人で森に入って猛獣に殺された、とか。自分の才能に溺れて命を失った、とかね。
(そんな、酷い言い方……)
黙り込むアキを心配そうに見つめるミリアを横に。
エマが、嫌悪感も顕に吐き捨てるようにこう言った。
「なにそれ」
エマのその言葉に大きく頷くと。
シャインは、小分けにしたサラダの上に、レモンと岩塩、そして黒胡椒で味付けされたオリーブオイルをかけると、それを口に運びながらこう言った。
「そう怒りたくなるのはもっともだと思うよ。ただね、これは国民だけが悪い訳じゃないんだ。何せ、ガイの死に関して、騎士団はおろか、国すらも国民に死因を明らかにしていないんだから。国民が不安になって、ネガティブな噂を立ててしまうのは、ある意味、必然ではある」
「だからって、こんな噂話……曲がりなりにも国民のために命がけで戦っていた故人に対して失礼じゃない」
そう、いきり立つエマに。
シャインは、「これが現実だ」といわんばかりにこう言った。
「そうだね。だけど、誰かが真実を言うまでは、この噂は絶えないだろう」
「真実、か」
そう言って、腕組みするグレックを前に。
ミリアは、ハッと閃いたようにこう言った。
「そう言えば、アキさんのお兄さんの相棒って、誰だったんですか。その方に聞いてみたら、もしかしたら……」
(その人が誰かさえ分かれば、アキさんのお兄さんが何をしようとしてたか、分かるかも!)
内心、我ながら名案を思い付いたと、自分で自分を褒めるミリアの横で。
エマも、大きく頷くとこう言った。
「あの……シャインさん。ガイさんの相棒の方について、何か知っていたりしますか」
思いのほか熱のこもったエマのその質問に。
シャインは申し訳なさそうに肩を竦めると答えて言った。
「いや、実は僕も良くは分からないんだ。とにかく、ガイには色々と機密事項が多くてね」
「そう、なんですね」
「ただ、噂では……」
そう前置きすると。
シャインは、さらりとこう言った。
「王太子殿下なのでは、と一部の国民の間では噂されているみたいだね」
そう言って、すまし顔でブランデーを一口啜るシャイン。
そんなシャインを、グレックは唖然と見つめながらこう言った。
「お、王太子殿下、ですか……」
「まあ、あくまで噂レベルだけどね」
そう言って、苦笑するシャインを横に。
ミリアは視線を下に落とすと、冷めきったホットワインのグラスを両手で抱えながらこう言った。
「それにしても、アキさんのお兄さんの身に、一体何が起こったんでしょうか……」
その問いに、皆、それぞれ物思いにふけり始め、テーブルは一瞬、しん……と、静まり返ってしまう。
と、そんな四人のもの憂い気な様子に。
シャインは、ブランデーのグラスを片手で持ちながら苦笑いすると、それをテーブルの上に置いてこう言った。
「悩むのも若者の特権だけど、楽しむのも若者の特権ってね。ほら、君たち、折角なんだし、何か頼んだらどうだい?」
そう言って注文を急かすシャインに。
シャインの気遣いをいち早く察したミリアは、元気な声でこう言った。
「じゃあ、私はサーモンとタマネギのカルパッチョを!」
それに続き、グレックもシャインに気を使ってこう言う。
「じゃあ、俺はマグロのステーキをひとつ。エマはどうする?」
「そうね、私は……アボガドとマグロの醤油和えにしようかしら。アキは、何か食べる?」
悩めるアキの顔を伺うように見つめるエマに。
アキは、ハッと我に返ったように目を見開くと、直ぐにいつものアキに戻って、にやりと笑うとこう言った。
「俺は……みんなから少しずつ貰っていいかなー? 食べるなら、色んなものを食べたいじゃない?」
「ほんとに、あんたって子は……」
そう言って、心底、呆れ返るエマを前に。
アキは、冗談めかしてちろっと舌を出して見せる。
そんな風に。
エマと楽しそうにじゃれ合うアキの様子を、シャインは、手に持ったブランデーのグラス越しに、何故だか物悲しげな顔で見遣るのであった。
(そんな、酷い言い方……)
黙り込むアキを心配そうに見つめるミリアを横に。
エマが、嫌悪感も顕に吐き捨てるようにこう言った。
「なにそれ」
エマのその言葉に大きく頷くと。
シャインは、小分けにしたサラダの上に、レモンと岩塩、そして黒胡椒で味付けされたオリーブオイルをかけると、それを口に運びながらこう言った。
「そう怒りたくなるのはもっともだと思うよ。ただね、これは国民だけが悪い訳じゃないんだ。何せ、ガイの死に関して、騎士団はおろか、国すらも国民に死因を明らかにしていないんだから。国民が不安になって、ネガティブな噂を立ててしまうのは、ある意味、必然ではある」
「だからって、こんな噂話……曲がりなりにも国民のために命がけで戦っていた故人に対して失礼じゃない」
そう、いきり立つエマに。
シャインは、「これが現実だ」といわんばかりにこう言った。
「そうだね。だけど、誰かが真実を言うまでは、この噂は絶えないだろう」
「真実、か」
そう言って、腕組みするグレックを前に。
ミリアは、ハッと閃いたようにこう言った。
「そう言えば、アキさんのお兄さんの相棒って、誰だったんですか。その方に聞いてみたら、もしかしたら……」
(その人が誰かさえ分かれば、アキさんのお兄さんが何をしようとしてたか、分かるかも!)
内心、我ながら名案を思い付いたと、自分で自分を褒めるミリアの横で。
エマも、大きく頷くとこう言った。
「あの……シャインさん。ガイさんの相棒の方について、何か知っていたりしますか」
思いのほか熱のこもったエマのその質問に。
シャインは申し訳なさそうに肩を竦めると答えて言った。
「いや、実は僕も良くは分からないんだ。とにかく、ガイには色々と機密事項が多くてね」
「そう、なんですね」
「ただ、噂では……」
そう前置きすると。
シャインは、さらりとこう言った。
「王太子殿下なのでは、と一部の国民の間では噂されているみたいだね」
そう言って、すまし顔でブランデーを一口啜るシャイン。
そんなシャインを、グレックは唖然と見つめながらこう言った。
「お、王太子殿下、ですか……」
「まあ、あくまで噂レベルだけどね」
そう言って、苦笑するシャインを横に。
ミリアは視線を下に落とすと、冷めきったホットワインのグラスを両手で抱えながらこう言った。
「それにしても、アキさんのお兄さんの身に、一体何が起こったんでしょうか……」
その問いに、皆、それぞれ物思いにふけり始め、テーブルは一瞬、しん……と、静まり返ってしまう。
と、そんな四人のもの憂い気な様子に。
シャインは、ブランデーのグラスを片手で持ちながら苦笑いすると、それをテーブルの上に置いてこう言った。
「悩むのも若者の特権だけど、楽しむのも若者の特権ってね。ほら、君たち、折角なんだし、何か頼んだらどうだい?」
そう言って注文を急かすシャインに。
シャインの気遣いをいち早く察したミリアは、元気な声でこう言った。
「じゃあ、私はサーモンとタマネギのカルパッチョを!」
それに続き、グレックもシャインに気を使ってこう言う。
「じゃあ、俺はマグロのステーキをひとつ。エマはどうする?」
「そうね、私は……アボガドとマグロの醤油和えにしようかしら。アキは、何か食べる?」
悩めるアキの顔を伺うように見つめるエマに。
アキは、ハッと我に返ったように目を見開くと、直ぐにいつものアキに戻って、にやりと笑うとこう言った。
「俺は……みんなから少しずつ貰っていいかなー? 食べるなら、色んなものを食べたいじゃない?」
「ほんとに、あんたって子は……」
そう言って、心底、呆れ返るエマを前に。
アキは、冗談めかしてちろっと舌を出して見せる。
そんな風に。
エマと楽しそうにじゃれ合うアキの様子を、シャインは、手に持ったブランデーのグラス越しに、何故だか物悲しげな顔で見遣るのであった。