「初めまして。僕は、シャイン・ボールドウィン。彼女たちを大熊から助けた斧士(ふし)のアイザック・スタイナーから、彼女たちの面倒を見る様にと頼まれ者だよ」

 そう言って、またブランデーを一口、口に含むシャインに。
 グレックは、信じられないという風にこう言った。
 
「アイザック・スタイナー?」

 そう言って、固まるグレックに、エマは、怪訝そうな顔でこう尋ねる。

「どうしたの、グレック。アイザックさんがどうかした?」

 そんなエマの問いに、グレックは我に返ると、シャインをまじまじと見つめて尋ねて言った。

斧士(ふし)の中でも若手のエースと呼ばれる、あのアイザック・スタイナーさんから……?」
「そうだよ。いやはや、アイザックも有名になったもんだね」

 そう言って、苦笑い気味に肩を竦めると、シャインはまたブランデーを一口啜る。
 そんなシャインを唖然と見つめるグレックに、エマはにやりと笑うとこう言った。

「アイザックさん、大熊を一撃で仕留めたのよ、凄いわよね」

 その言葉に、グレックはエマの方を向くと驚愕の面持ちでこう呟く。

「一撃……?」

 そんなグレックの心境など知ってか知らずか、アキが酷く興奮したようにこう言った。

「大熊を一撃って、凄い腕だなぁー。って、まさか……エマとミリアちゃん、大熊に襲われたなんてことは……」

 そう顔色を一瞬で青くするアキに。
 エマは、ふんと鼻を鳴らすと吐き捨てるようにこう言った。

「襲われたわよ」
「うそ、まじか……」

 そう言って口元に片手を当てるアキに。
 エマは、さらに追い打ちを掛ける様にこう言った。

「殺されかけてたところを、アイザックさんに助けて貰ったのよ」

 そう言って、ワインをがぶ飲みするエマを前に。
 グレックは、シャインに向かって深々と礼をしながらこう言った。

「それは……危ない所を、助けて頂きありがとうございました」

 そう言って畏まるグレックに。
 シャインは困ったように眉を顰めると、空になったブランデーのグラスをテーブルの上にトンと置くとこう言った。

「助けたのはアイザックだよ。礼ならアイザックに。それより、君は確か……」

 そう言って、シャインはグレックをじっと見つめると、更に興味深そうに尋ねて言った。

「そう確か、今日の[武術大会]の優勝者の一人、グレック・ワイズナー君、だよね?」
「あ、はい。それが、何か……」

 もの問いたげに、そう眉を顰めるグレックに。
 シャインは悪戯っぽい笑みを浮かべながらこう言った。
 
「アイザックがね、凄く褒めていたよ。『少し地味だが、いい騎士になるぞ』って」
「えっ……」

 シャインのその言葉に、嬉しさと恥ずかしさで顔を赤らめるグレックを。 
 シャインは面白そうに眺めるのであった。