「なかなか決着つかないわね」
イライラとそう言うエマに。
アキも、自分に言い聞かせるかのようにこう講釈する。
「傍から見ると、グレックが、相手のスピードと技の繰り出しで押されているように見えるけど。たぶん、体力的にはグレックの方が有利だと思う。長期戦は体力勝負だからねー」
「あ、またグリフォードさんの連続攻撃!」
グリフォードが繰り出した連続攻撃を、グレックは体を回転させて躱すと、すぐさまカウンター攻撃へと繋げていく。
「上手く躱しているわね」
エマが、感心したようにそう漏らすと、アキも、椅子から腰を浮かせて、少し興奮気味にこう言った。
「きっと、今みたいなカウンターを打つために、隙を狙ってるんだろうとは思うけど……」
「あ、決まった……今、決まりましたよね?」
ミリアが立ち上がって、グレックを指さしてそう言った。
審判も、片手を挙げ、試合終了を知らせている。
「ちょっと、微妙だったけど……決まったようだねー」
審判の試合終了の合図をしっかりと確認し、アキもそう言って額の汗を拭う。
しかし、審判の騎士が右手を上げて、試合が終了したことを告げているのにもかかわらず――。
「なんか試合……まだ続いてませんか」
胸に手を当て、不安そうにアキとエマを見るミリアに。
エマも、徐に立ち上がると、険しい顔をしてこう言った。
「確かに、審判は止めにろうとしているみたいだけど……」
そこ言葉を裏付けるように、会場からも至る所でブーイングが上がり始める。
と、次の瞬間――。
「えっ……」
ミリアは、余りに一瞬のことで目を疑う。
(今、グリフォードさんの木剣がグレックさんの手首を……)
見ると、会場の中央に立つグレックは、木剣を落とし、右手首を左の手で押さえている。
「うそ……」
そう言って、口元を抑えるミリアを横に。
エマが、短く綺麗に手入れされた親指の爪を、惜しそうに噛みながらこう言った。
「……なんて、奴なの」
「……まずいね」
アキが、額の汗を拭いながら、そう言って席に座る。
会場からも、グレックを哀れむ声が各所から上がり、グリフォードへのヤジが矢のように飛び交っている。
「元々、性根の悪い奴だとは思っていたけど、まさか、ここまで腐っていたとはね」
エマは吐き捨てるようにそう言うと、会場の真ん中で白々しく審判に謝っているグリフォードを鋭い眼差しで睨み付けた。
「グレックさん、試合……続けられるんでしょうか」
早鐘のように打ち付ける心臓を抑えながら、ミリアはそう言ってアキを見る。
そんなミリアに、アキは困った顔をすると、肩を竦めてこう言った。
「けがの程度にもよると思うけど。ま、どっちにしろ、グレックは試合に出るんじゃないかな」
「手を怪我しているのにですか! それより、お医者さんに見せないと……」
そう言って、慌てふためくミリアの背中を、アキはポンポンと二回叩くと落ち着かせるようにこう言った。
「あのぐらいの傷なら、取り敢えずはテーピングで何とかなるから。大丈夫だよ」
そう言って、片目を瞑って笑うアキ。
そんなアキに、エマは少し心配そうにこう言った。
「テーピングはともかく。けがの程度がちょっと気がかりよね。本当にテーピングで済めばいいけど」
そんなエマの心配をよそに、アキは思い出したように席から立ち上がるとこう言った。
「そろそろ昼だよね。確か、決勝前に休憩が入ってたと思うから、俺、グレック呼びに行ってくるよ。詳しいことは、本人の口からその時、聞けばいんじゃない?」
そう言って、手帳を鞄にしまうアキに。
エマは、「そうね」と言って頷くと、早速、弁当を用意しつつこう言った。
「じゃあ、アキ。よろしく」
「はいはいー」
そう言って会場の中央に降りていくアキの背中を見ながら。
ミリアは、もやもやした気持ちを抱えながら、眉を顰めてこう言った。
「グリフォードさん……試合は終わっていたのに、何であんなこと」
未だ、この事態に興奮収まらない会場の中で、ミリアは悶々とグリフォードを見つめるのであった。
イライラとそう言うエマに。
アキも、自分に言い聞かせるかのようにこう講釈する。
「傍から見ると、グレックが、相手のスピードと技の繰り出しで押されているように見えるけど。たぶん、体力的にはグレックの方が有利だと思う。長期戦は体力勝負だからねー」
「あ、またグリフォードさんの連続攻撃!」
グリフォードが繰り出した連続攻撃を、グレックは体を回転させて躱すと、すぐさまカウンター攻撃へと繋げていく。
「上手く躱しているわね」
エマが、感心したようにそう漏らすと、アキも、椅子から腰を浮かせて、少し興奮気味にこう言った。
「きっと、今みたいなカウンターを打つために、隙を狙ってるんだろうとは思うけど……」
「あ、決まった……今、決まりましたよね?」
ミリアが立ち上がって、グレックを指さしてそう言った。
審判も、片手を挙げ、試合終了を知らせている。
「ちょっと、微妙だったけど……決まったようだねー」
審判の試合終了の合図をしっかりと確認し、アキもそう言って額の汗を拭う。
しかし、審判の騎士が右手を上げて、試合が終了したことを告げているのにもかかわらず――。
「なんか試合……まだ続いてませんか」
胸に手を当て、不安そうにアキとエマを見るミリアに。
エマも、徐に立ち上がると、険しい顔をしてこう言った。
「確かに、審判は止めにろうとしているみたいだけど……」
そこ言葉を裏付けるように、会場からも至る所でブーイングが上がり始める。
と、次の瞬間――。
「えっ……」
ミリアは、余りに一瞬のことで目を疑う。
(今、グリフォードさんの木剣がグレックさんの手首を……)
見ると、会場の中央に立つグレックは、木剣を落とし、右手首を左の手で押さえている。
「うそ……」
そう言って、口元を抑えるミリアを横に。
エマが、短く綺麗に手入れされた親指の爪を、惜しそうに噛みながらこう言った。
「……なんて、奴なの」
「……まずいね」
アキが、額の汗を拭いながら、そう言って席に座る。
会場からも、グレックを哀れむ声が各所から上がり、グリフォードへのヤジが矢のように飛び交っている。
「元々、性根の悪い奴だとは思っていたけど、まさか、ここまで腐っていたとはね」
エマは吐き捨てるようにそう言うと、会場の真ん中で白々しく審判に謝っているグリフォードを鋭い眼差しで睨み付けた。
「グレックさん、試合……続けられるんでしょうか」
早鐘のように打ち付ける心臓を抑えながら、ミリアはそう言ってアキを見る。
そんなミリアに、アキは困った顔をすると、肩を竦めてこう言った。
「けがの程度にもよると思うけど。ま、どっちにしろ、グレックは試合に出るんじゃないかな」
「手を怪我しているのにですか! それより、お医者さんに見せないと……」
そう言って、慌てふためくミリアの背中を、アキはポンポンと二回叩くと落ち着かせるようにこう言った。
「あのぐらいの傷なら、取り敢えずはテーピングで何とかなるから。大丈夫だよ」
そう言って、片目を瞑って笑うアキ。
そんなアキに、エマは少し心配そうにこう言った。
「テーピングはともかく。けがの程度がちょっと気がかりよね。本当にテーピングで済めばいいけど」
そんなエマの心配をよそに、アキは思い出したように席から立ち上がるとこう言った。
「そろそろ昼だよね。確か、決勝前に休憩が入ってたと思うから、俺、グレック呼びに行ってくるよ。詳しいことは、本人の口からその時、聞けばいんじゃない?」
そう言って、手帳を鞄にしまうアキに。
エマは、「そうね」と言って頷くと、早速、弁当を用意しつつこう言った。
「じゃあ、アキ。よろしく」
「はいはいー」
そう言って会場の中央に降りていくアキの背中を見ながら。
ミリアは、もやもやした気持ちを抱えながら、眉を顰めてこう言った。
「グリフォードさん……試合は終わっていたのに、何であんなこと」
未だ、この事態に興奮収まらない会場の中で、ミリアは悶々とグリフォードを見つめるのであった。