不安と共に引いたくじ引きの棒の先に、真っ赤なインクの色を見た瞬間。
 ミリアは頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を覚えた。
 頭の中と両の眼がぐるぐる回り、まるで自分の体が自分のものではないかのような感覚に襲われる。

 どこをどう歩いたのか。

 気が付いた時には家に居て、小さな家の小さな居間では両親と妹二人が頭を突き合わせ、沈痛(ちんつう)な面持ちで項垂(うなだ)れていた。
 その家族の絶望ぶりと重苦しい空気から、改めて「自分はくじに当たってしまたのだ」という事実に思い至り、自然と目から涙が、口元から嗚咽(おえつ)が漏れた。
 
 くじの当たり。

 それは、ミリアが王都からの要請により、「王都に強制移住する島民・十人」の一人として、村から送り出されるということなのであった。