「うは~!人さんいっぱいだねえっ!」
「はぐれんなよ真琴」
「はいさっ!」
そこは市が設営する体育館。
すれ違う胴着姿の高校生たちは揃いも揃って暑苦しいときた。
上鷹先輩の試合に一緒に来てほしい───そう真琴から誘われたのは数日前のこと。
大切な休日に誰がそんなもん行くか、より。
真琴がひとりは危ない、のほうが強かった。
「りっちゃんりっちゃん、今日のわたしどうすか…!?」
「…カワイーよ」
「ほんと!?メイクねっ、昨日の夜まで練習して頑張ってみたの!」
しなくても安定で可愛いけど。
服もメイクも気合いバッチシ、としても私はそのままの真琴のほうが好きだ。
上鷹だけを応援するために、上鷹のためだけにそこまでオシャレしたんなら。
(ウソ言ってまで“わりとブス”って言えば良かったな)
そんなことばっか考えてる自分、消えろよいい加減。



